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おばちゃんの話




漂うかおりににこりと笑みを向けるその人は、学校で最強と名高いおばちゃんだ。
学園最強。本人はそう語ったことなど一度もないのだが、そう言われる。当たり前といえば当たり前かもしれない。彼女はこの学園での食に関しての全てを握っているのだ。食は偉大である。
おばちゃんとしては特にそんな称号がほしかったわけでも、権力が欲しかったわけでもないのだが。
でもねぇ、とおばちゃんは苦笑した。
ちょうどその時、おばちゃん!という少々慌てた声がおばちゃんの耳に留まる。一年生だ。たしかは組の、金吾君だったか。
彼が慌ててここに駆け込んだということは。

「戸部先生が倒れられました!」
「まぁまぁまた鍛練に集中しすぎたのねぇ」

わかりましたと苦笑いを浮かべ、じゃ今すぐおにぎりを作るわねという。ほっとしたような表情を作って金吾君は頭をさげた。
それにしても戸部先生は立派な険術の先生だけど修業に集中しすぎるのはよくないわねぇ、
金吾君がそわそわしながらも申し訳なさそうな顔をしたのに笑う。全く、弟子にこんな顔させるなんて困った先生だ。
ひとつ、握り終えるとまた、おばちゃん!という声が届いた。

「おばちゃん!土井先生がたお、倒れ…」

めずらしく血色のよくない顔をしながらきり丸が駆け込んでくる。ほんとに、しかたない。

「はいはい、全く土井先生の練りもの嫌いも相当ね、お腹すいて倒れるまで我慢するなんて。」

呆れたように笑い、今おにぎりを作るわというとやっと安心したようにきり丸は笑った。それから、やっと周りが見えるようになったのか苦笑を浮かべ、金吾君と並んで食堂の椅子に座った。

「おばちゃん!野村先生が…!」

「はいはい、全くなんでそんなにらっきょ嫌いなのかしらねぇ、」

わかったわ、というと乱太郎がぽかーんと口を開ける。
待ってなさいというと少し戸惑ってから、笑って金吾君ときり丸がいる席についた。またひとつ、おにぎりを追加して、全くしかたない先生達ねぇとおばちゃんはいう。

ついでに少し小さめのおにぎりも握りながら、また先生達にはお説教しなくてはと思う。さて、どんな言葉をいって怒ろうか。
先生たちまた怒られるね、こりないなぁ、一年生たちはこそこそ話しながらいった。
先生にお説教をできるおばちゃんはやっぱり学園最強だね、と。








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