嘘吐き環状感傷論(竹谷/現代)
眺めた窓辺の外側では、粉雪が降頻(ふりしき)る。

実家に帰ると口にした終業式前の無駄話。
きっと私は冬休みが終わるまで寮から出ないだろう


「…なあ、八。」


窓の外を眺めたまま、帰省する為の準備をしている八左ヱ門を呼んでみた


「んー?何だ、矢史朗次」

「やっぱり冬休みは嬉しいか」

「そりゃ・・・長い休みは学生の特権だからな。」

「…そうか、学生の特権だからか」


何を唐突に言っている。と、そんな顔をしているのは見なくても声で解る


「それが如何かしたのか?」

「いや、何でもない。気にするな」

「そっか、じゃあ気にしない」

「そうしてくれ」


きっと明日から一人で居るには静か過ぎるだろう。


「…なあ、矢史朗次」

「ん?何だい八」

「ちょっとこっち向けよ」

「それは出来ない相談だな、諦めてくれ」

「良いからこっち向けって」


仕方がなく振り向いてやったら、怒ったような困ったような何とも形容し難い顔の八左ヱ門が居た


「・・・向いてやったぞ、何だ」

こっちを向けと言った割に二の句が聞こえない。

「おーい、聞いてるのか竹谷八左ヱ門」


無言で近寄って来たと思ったら頭をグシャグシャにされた


「・・・八、お前は何がしたいんだ」

「明日から二人とも実家だから、思う存分撫でてみた」

「思う存分撫でられる意味が解らない。」

「えー、それ位お前なら解るだろ」

「知るか。考えるのも面倒だ」

「なにそれ、矢史朗次きっつー・・・」



くだらない話していたら消灯時間を30分も過ぎていたらしく見回りに来た寮長に少しだけ怒られた。


「あー…すみません、今から寝ます」

「は、はい。着替えたらすぐ寝ます」


ベッドに早々(はやばや)と潜り込んだ私とは対照的に帰省準備で寝間着に着替えてなかった八左ヱ門の差。
慌てて着替えようとバタバタしている音の後ゴスッとイイ音がした。見れば脱いだズボンに足を引っかけ床に倒れてしまっていたらしい


「ズボンと遊ぶのは楽しいか?」

「ちょっと待て。俺いま遊んでない」

「そうだな、遊んでいるなら床には寝ない」

「・・・。」

「冬にそんな寒そうな格好で寝るとはバカ丸出しだぞ」

「こんな格好で床に寝たら風邪ひくっつーの」

「バカは風邪をひかないと言うが」

「お前酷い、ホント酷い」

「そうだろう。酷いのは元々だ、上半身裸で寝ようとしたバカな八左ヱ門」


下はちゃんと穿(は)いていたが何処までヘタレなのかと心中思う。
床から起き上がって詰め寄ってくるので、その腕を引いて布団の中に入れてみる


「………あのー、もしもし矢史朗次さん?」

「何だい、バカざえもん」

「……、ごめ。腕、放してくんね?」

「だがしかし断る」

「マジ放せって…なっ?」

「"明日から二人とも実家だから"、少しじゃれ合おうと思って」

「!、矢史朗次・・・うぎゃあ!?」


告げてから引いていた腕を放す。そのままベッドから八左ヱ門を蹴落としてやったのでもう一度ゴスッとイイ音がした

そのあとは何も考えず眠りについた。



余り嬉しいとは思わない
だけど溜息も出ない明日が来る





閉劇。
タケメンとgdgdバ会話して強制終了。
男装夢主で、この「嘘吐き」は拍手しかり自分の中でシリーズ化してます

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あきゅろす。
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