leisure time(蘭丸/現代)
今日ハ楽シカッタ。
明日ハ如何カナ、楽シイカナ?

明日ガ如何ナルカ、ナンテ解ラナイカラ

きっと 面白いんだなって思ってる。




私は小さな音と共に席に着いて、本を広げた

中等部と高等部で共有している図書館 その場所はまるで神聖な場所のようにシンと静まり返っている。しかし、私は決して静かな場所を好む人間じゃ多分ない だからあまり好きになれないで居た。

(―― まあ、もう慣れたけどさ)

他の子は見るからに分厚い参考書と、これまた分厚い文学書を広げて勉強中
一応は私も本を広げているけれど、それはこの図書室に唯一ある単行本の漫画だったりしちゃう訳で…
歴史が苦手な私にとって好きな本の部類には入れられそうも無くて。だからこの静まり返った図書室に置かれた唯一の漫画を見ようかと広げた

(だって他は歴史系の漫画本ばっかりでつまらない)

取り敢えず 私が何を読んでいようとも誰も気にしちゃ居ないだろう
本を…いや漫画のページをめくる指は、ほんの小さな音しか立てないにも関わらず 静かな部屋に大きく響いてる

(…ってか、本当にちょっと静か過ぎるんじゃない?)


ときどき本を借りに来る人や返却する人がカウンターに来るのだが、私の知り合いなんて来ない。…と言うか、まず来た事もないだろうココに

いくらジャンケンで負けた委員会とは言え、何ともまあ 楽で、暇で、面倒くさ過ぎる委員会なのだろうか?

そんな事を考えながら暇で又ページをめくる。ああ…ものすごーく暇


「図書委員の仕事やりに行って来るね」と、私がそう言った時に「そーなの?てか彩夜は図書館って言葉が似合わねえな、超ウケるー!」などと笑い飛ばした奴らでも連れてこようか…

いや…、アイツらを連れてくるとうるさくて最後に怒られるのは私。
(だ、ダメだ、止めよう。つーか暇過ぎだしっ)

怒られたくはないけども、暇なものは暇。退屈や暇は神様だって仕留められるって言ってたんだぞ!…って誰に言ってんですか私。
漫画に書いてある事に同調しつつ脳内で激しく愚痴とツッコミを器用にしていたその時、丁度ガラリと静かな図書室の扉が開いた。


一人の男子生徒が不機嫌顔で入って来た。後輩の蘭丸だ

ツカツカ歩いてきたかと思うと、私が座る席の 隣のそのまた隣の空席に音を立てて座った。


「・・・森くん」

「・・・何だよ」

「君は人に挨拶もしない人だったかな?」

「・・・ちーッス彩夜、先輩」

「うん、よろしい」


面倒くさそうでは有るが一応素直な蘭丸に、にっこりと笑う。しかし何故こんなにコイツは不機嫌そうなんだろうか


「ちょっと、森?」

「・・・何だよ」

「・・・今、ウッゼエ…とか思ったでしょ」


「……………、…別に」

「…間が長くて肯定してるのと一緒なんだけど」

「・・・そりゃ悪かったな彩夜先輩」

「・・・ってアンタ、思ってもない事言うんじゃないわよ」

「・・・そーだな」


私が何を言っても蘭丸はそっぽを向き、今日入荷したばかりの本を黙々と読んでいた。でも私には著作者名の漢字の読みさえも解らない


「何で森はそんな不機嫌なの?」

「いや、別に」

「いや あのねえ?そんなにブッスーとした顔で言われても説得力が…」

「別に、何も」


「(可愛くない...)」

「(...何とでも)」


ツンっとまるで愛想のない猫のように冷たくそっぽ向いてる。蘭丸はこんな風だし全く面白くない。

(暇つぶしに遊ぼうと思ったのに…何よ、前だけちょんまげ頭のくせに。)

もう良いさ、取敢えず今見てる漫画を読み終えよう…12巻目まで読んだ漫画はあと半分くらいだったので 一気に読む事に決めた




無機質な音が響き、そんな中で私は 本を持ったまま途中で寝そうになっていた
コクンと首が項垂れて机に打付けそうになる。危ないなぁ…と机に悪態をつきながら、今の姿勢を立て直す

時計を見ると既に16時30分を過ぎていた。
閉館時刻は17時だから、もう残っているのは図書委員の私と蘭丸だけ。気が付けば私達以外に人がいなかった


「そう言えば森、アンタ部活は如何したのさ」

「今日は休みをもらったんだよ」

「あれ?委員会があるのでー..とか言っといて途中から行くんじゃないの?」

「......、俺は部長だぞ」

「へ?...ぁ、ああ 忘れてないよ!うん、ちゃんと覚えてたよ。あっはっはー」

「(怪しいな.....)」


「…ええと、それはそうと。何で森蘭丸ぶちょー君は不機嫌な訳?」

「・・・さっきも言った通り、別に何もねえつってるし」

「嘘吐け、このちょんまげ」

「(何だと、このアホ女)」


「・・・今、私の悪口言ったでしょ」

「別に」


顔に書いてあるっての 可愛くないちょんまげっ子め。


「・・・ちょっと森」

「何だよ彩夜」

「彩夜 セ・ン・パ・イ、でしょ。アンタ先輩をバカにしてタダで済まそうとか思ってるのかな?」

「(...いまどきカツアゲか・・・?)」

「ぁ、ちなみにカツアゲとかじゃないからね」

「(何で思ってる事がバレんだよ・・・)」


大きめな音を立ててずっと座っていた席を立つ。そして距離を詰めるように蘭丸の隣の椅子に座った


「な、なんだよ…!」

「(あ、うろたえてる…なかなか面白い)」

「いや、だから何だってんだ彩夜!」

「うん?…可愛くない後輩をちょっとだけ懲らしめようかなぁと思って?」


そして 椅子からちょっと腰を浮かせて蘭丸の両肩を掴んだ。


「ちょっ、ま、マジで何なんだよっ?!」


戸惑う蘭丸に、コレでもかと言うくらいの笑顔で笑い掛け うろたえる後輩の唇に自分の唇(ソレ)を押し付ける

私がうっすらと目を開けると、何度もパチパチとまばたきを繰り返す音が耳に届き 蘭丸は慌てて居るらしい。
此処でスグに唇を離す予定だったんだけど・・・・やーめた。と言う訳で、ちょっと角度を変えて深めに口付けてみた


「…っ……」

「.....」

「………ふ…。」


うー…ん。抵抗の「て」の字もなくて私としてはちょっと面白くない、取敢えずそこでやっと微かに音を立てて唇を放してあげた。

再度、蘭丸を見れば もう目が何処を向いているやら…目が彼方此方(あちこち)に動いて動揺してる。

(ふむ、ちょっと遣り過ぎたかな?)


「もーりー?」

「・・・。」

「森ちょーんーまーげー?」

「・・・。」

「おーい、らーんーまーるー?」

「・・・。」


「ま、良いかぁ。って言う訳で私帰るからさー…戸締り宜しくね?」


放心して居る蘭丸は放って置いて、私は帰る身支度をする。ほんのちょびっと罪悪感も有るけれど、私は余り過ぎた事などは気にしないタイプだから良しとして置く

(んー、でも…まあ。)

放心状態の蘭丸にもう一度顔を寄せれば、頬に「ちゅっ」と軽くキスをして置いた


「じゃあねー!」


蘭丸と私以外の居ない、それは静かな図書室で にこやかに笑顔で手をふって部屋を出る。案の定 追い討ちを掛けるかのように蘭丸の頬にキスをしたので彼は放心状態のまま。

それにしても私の暇加減なんてどこかに行ってしまったらしい、今は面白くて仕方がない。ププッと悪人風に笑いながら、私は廊下をスキップして図書室から遠ざり下校して行く

今日は機嫌が悪かったけど、明日は如何だろ。
もっと機嫌が悪くなってそうよね… 今は考えれば考えるだけ私は楽しいけど、ね!



*END*

初出し2005/某月日
書直し移動2010/05/11

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