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依存


真夜中、私は真っ暗な教室
でひとりぽつんと佇んでい
た。なぜか膝を抱えて恭弥
を待っていた。何時間も何
日間も、もしかしたら何ヶ
月もずっとずっと私はひと
りで恭弥のことを待ってい
て、でも恭弥は来てくれな
い。ふと思い出したように
携帯の電話帳を開いてみる
と、恭弥の番号がなくなっ
ていた。呆然として、携帯
のディスプレイから目が離
せなくなる。怖くて怖くて
、鼓動が速くなる。こっそ
りと昔撮った恭弥の写真を
保存しておいた秘密のファ
イルを、震える指で開く。
……いない。いない、のだ
。応接室で恭弥が仕事をし
ている時に撮った写真から
、恭弥だけがすっぽりと抜
け落ちている。主を失った
応接室、それはとても不自
然で、ひどく寂しく見えた
。鼓動がまた、速くなる。
屋上で、昼寝中の恭弥を撮
った写真。やっぱり恭弥だ
けが映っていなくて、殺風
景な屋上だけが、画面に広
がっていた。      
どうして。意味がわからな
い。真っ暗な教室でひとり
震えながら、立ち上がる。
応接室に、行かなくちゃ。
きっと恭弥はいるんだから
。彼が私を置いて、一人い
なくなるなんて有り得ない
。素っ気なく振る舞ってい
ても、恭弥は私には優しか
ったんだから。私の前だけ
では、笑ってくれていたん
だから。        

走る、走る。早鐘を打つ心
臓を無視して、ひたすら走
った。応接室は、こんなに
遠かったっけ。汗がにじむ
。気持ち悪い。(…よかっ
た。応接室は、まだある)
ようやくたどり着いた応接
室の扉を勢いよく開けた。

―――――結果として、そ
こに彼はいなかった。薄々
はわかっていたけれど、目
の前にしてしまうとショッ
クが大きい。また私は呆然
として、手をドアノブにか
けたまま、ただそこに突っ
立ったっていた。恭弥が、
いない。またしても現実味
を帯びた絶望の波が押し寄
せて来て、なんだかくらく
らする。目の前が霞んでよ
く見えない。私は現実逃避
をするかのように、意識を
手放した。       




(どこへ、行ってしまったの)


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(10.1210)

突然消えた恭弥に取り乱すヒ
ロインちゃん。

それが「心配」ではなく「執
着」であることには気づかな
い。自分が依存してることに
さえ、気づかない。    
…続くかもしれません(笑) 



[*前]

あきゅろす。
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