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「骸、この『J』は何か分かったのか?」
「いいえ」
「じゃあケーニッヒの居場所は?」
「まだですねぇ」
「お前…ちゃんと仕事してんのか?」
焼くぞ?満面の笑みと共に言葉が放たれ 部屋の温度が急降下した。短気は損気。性格がひんまがってしまったツナは 獄寺よりも気が短いのではなかろうか。スパルタ教育し過ぎたせいかも、と自覚しているリボーンは止めない。止めても無駄なのを知っているからだ。
「どちらにしろ、ロレンツィニがいないんじゃ、真実は闇の中だな」
「そうですね。まだJが分かれば…ケーニッヒも何か知ってるはずです」
「だから早く見付けろって言ってるんだよ。任務始めて何年経ってると思ってるんだ」
「ボンゴレ、不満なら君が自分で探せば良いでしょう」
「俺は他のことで忙しいんだ」
扉をノックする音がする。部下が設計図を受け取りに来たと告げ しばらくすると再び扉が閉められた。それと同時に藍楽の耳へ入ってくる音も徐々に小さくなり 自分が難聴になってしまった気分であった。
遠くへ飛んでいた意識が 額に乗せられた大きな手に集束していく。額を通して伝わる体温が頭痛を和らげてくれた。聞き覚えのある女性の声と明るい男性の声が 視界に広がる暗闇へぐいぐいと侵入してくる。水音とも炎の音とも取れる効果音が気になり 藍楽は睫毛を震わせてゆるりと開眼した。
「ヴェラ、目ぇ覚めたみたいだぜ」
「ああ…藍楽、大丈夫か?」
ぼやけた視界で真っ先に捕らえたのは 水を纏った燕。胸の上に足をつき じっと藍楽を見つめていた。水を纏う燕など見たことがなく 目を見開いて顔を背ければ 長い棒を背負った男に爽やかな笑みを投げ掛けられた。燕の纏う水流が更に勢いを増す。するとふわっと浮遊感に包まれ 怠さが収縮していった。
首を回すと メイドらしき可愛い人がヴェルヴェットの後ろで忙しなく働いていた。ここは藍楽の自室。だが何故ベッドで寝かされているのか分からず 顎に傷跡がある男をぼんやりと眺めていた。眼球を動かす度に 頭をかち割るような痛みが走る。思わず眉を寄せると 日焼けした男が心配そうに頭を撫でた。すると再び痛みは溶けてなくなる。鎮静を司る雨燕がいるんだよ、と 無意識にオタク友達の話を思い出していた。
「俺、山本武ってんだ。一応雨の守護者だけど、まーそんなの抜きで仲良くしようぜ」
「…私、藍楽で――う"う"!」
「あ、すまん」
ヴェルヴェットが鎌先で匣を突っ突いていた。キン、キン、と甲高い金属音が微かに聞こえ 同時に脊椎を伝って電撃が走る。これが痛みだと理解するまでに数秒掛かり、 本人より先に気が付いたヴェルヴェットは 慌てて鎌を離した。痛みの余韻が波紋を残して体内を波打っている。瞼の裏に閃光が走り 走馬灯の如く今までの記憶が駆け抜けた――そうか、私は雲雀さんに攻撃を食らったのか。痛みが脳に刷り込まれているのか、はたまた実際に痛みが残っているのか、あの時のことが蘇り吐き気が込み上げてきた。
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