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綺麗な笑みを称える骸に握られた手より 熱い衝撃が駆け巡った。反射的に手を引っ込めれば 足元にパタタッと紅い斑点が咲き乱れ 手の平からは鮮やかな血が流れ出る。いつの間に取り出したのだろうか、彼の鈍く光る三又槍には鮮血が滴っており その持ち主は妖艶に微笑んでいた。信じられない、と言った表情の藍楽は 恐怖心を顕にして後退る。


「ろ、六道さん…一体何を…!?」

「クフフ、迷子になりやすい猫に鈴を付けただけですよ。でしょう、ヴェラ?」

「…まぁ一理ある」


だが前置きってものがあるだろう、と至って冷静に藍楽の手を止血し サッサと先を行くヴェルヴェットを 呆然と眺める藍楽。鈴って何?と聞きたいが自分が聞いたところで理解出来ないことかもしれない――たった数時間の間に通常の数倍思考を働かせ 最早考えることに辟易していた彼女は 何事もなかったように身を翻した男を無言のまま見送っていたのだった。









――ピィー!


不機嫌そうな面持ちで仕事机に向かうボンゴレ10代目。彼の部屋にはリボーンから新タイプの匣について説明を聞いて駆け付けた雲雀がゆったりとソファで寛いでおり 甲高い小鳥の鳴き声が限り無く能率を低下させていた。美しい紋様が描かれたコーヒーカップからは 白い湯気が立ち上ぼっている。差し出されたエスプレッソに手を付ける様子を微塵も見せぬ雲雀は 肝心の少女が姿を見せぬことへ些か落胆を覚え 苛立ちを隠せぬ口調でツナへ抗議を始めた。


「綱吉、例の匣は?」

「買い物です」

「匣が買い物?随分と物好きなことさせるんだね」

「俺じゃない。リボーンですよ」

「ふうん…」


赤ん坊がさせたなら何か考えがあるのかな、と無表情で鷹揚に足を組み替える。と、ヒバードと言う呼称が知らぬ間に定着していた黄色い小鳥が何かに反応し 雲雀の頭上から飛び立った。開け放れた窓からは燦々と降り注ぐ太陽に忌々しい霧の守護者、伝達係とそれから聞いたことのない少女の声。窓越しに雲一つない青空を一瞥してからツナを見やれば ふいと目を逸らされてしまった。けれども彼の肯定がなくとも 見知らぬ少女が匣だと理解した雲雀は待ってましたとばかりに立ち上がる。それに釣られて視線を上げるツナ。


「恭弥さん…勢いあまって匣を壊さないでくださいね。一応貴重なんですから」

「僕に命令しないでくれる?…使えない匣は棄てるだけだ」


僕は僕の好きなようにすると冷笑を一つ、彼は黒いスーツを整えて部屋を出て行ってしまった。問題児ばかりの守護者達。あらゆる意味で最強と謳われるツナでさえ頭を痛める人間ばかりで 彼はこめかみを押さえつつ「全く…」と万年筆を放り投げたのだった。何とはなしにヴェルヴェットが持ってきたアタッシュケースを手に取れば 心の中に抑え切れなかった呟きが零れ出る。


「今日はおかしなことばかり起きる…」


異世界、ヒューマン型――簡単に解明出来そうにもない単語がたった一日で二つも出現した。製作者は一体誰なのか、また何の目的であれ程精巧なものを作り出したのか。少女は明らかに匣兵器の雰囲気を纏ってはいたが 一見するとどこからどう見ても人間である。異世界から来たという法螺〈ほら〉話に目を瞑ったとしても研究すべきことが増えたのは明らかであった。








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あきゅろす。
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