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藍楽の一言でハッとする大人二人。口喧嘩に夢中ですっかり彼女へ紹介が遅れていたことに気が付き ヴェルヴェットは骸を指差すと「霧の守護者だ」と説明をした。原作知識及び今朝 鎌人間からボンゴレについて説明を受けていた藍楽は ああ、と納得した。これが例のナッポー頭か、などと至極失礼なことを思い描きつつ マジマジと文字の入った紅い瞳を覗き込む。すると「六」の字が一瞬紅く光り 身体の中で何かがドクリと胎動するような感覚を覚えた。全身の血が沸騰し 後頭部に熱が集中する。そのせいでグラリと視界が揺らぎ 咄嗟に目許を抑えた彼女へ ヴェルヴェットが訝しげに声を掛けた。


「藍楽?…骸、お前何かしたんじゃないだろうな」

「君は何でも僕を犯人にすれば良いと思ってますね。…きっと僕の瞳が美し過ぎて固まってしまったんでしょう」

「それはない」


ナルシスト的な発言をバッサリ斬り捨てると 藍楽の肩を揺らして意識をこちらへ向けさせる。と、彼女が顔を上げ やっとヴェルヴェットと視線が絡まったと思いきや 鎌人間は思わぬ光景に相見えることとなった――藍楽の瞳が微かに紫色を帯びていたのだ。瞳の中で揺らめくアメジストに釘付けになること数秒、彼女が瞬きをした瞬間に消え失せてしまった。それはまるで本気モードのツナ――グローブ使用時 彼の瞳に橙色の炎が灯るが如く輝くのは周知の事実だった。したがって格別珍しいものでもなかったのだが それにしてもその揺らめきは美しく 見る者を魅了した。泡沫の夢際より意識が戻った少女は パチクリと目を見開く。


「あれ…?なんか今一瞬意識が…」

「……骸、今の見たか?」

「ええ、雲属性の色でしたね」

「へ?何?何か深刻な顔して私のほう見てるけど」


少女が自分だけ付いていけていないことに焦りを感じ目に見えそうな泡を飛ばしていると 何でもないさ、とヴェルヴェットは返す。けれど無表情の仮面からは抑え切れぬ一種の驚愕が漏れ出ており 骸はクックッと喉を鳴らした。


「クハハ!君は彼女が匣兵器だと信じ切れていなかったようですが、今ので真実が判明しましたね。彼女は匣兵器に間違ないでしょう」

「…悪かったな。いきなり新型を見せられてもそんなすぐに信じられるって訳でもないだろう」

「そうですか?…まぁ僕にしたらこの少女が匣兵器だろうとそうでなかろうと、別段構いやしませんがね」


僕の部下達も普通じゃありませんから、と妖艶な笑みを浮かべたが その会話を聞いていた藍楽は複雑そうに眉根を寄せた。彼の発言を要約すれば 人間でなくとも受け入れる準備がある、ということ。藍楽にしたら非常に嬉しい言葉であることには違いないのだが、明らかに藍楽が人間ではないことを前提とした話であり それを直感的に察知した彼女は殺伐とした気分になった。しかし匣と自分が繋がっていると分かったばかりで 自分は人間だ、と断言もするのも気が引ける。そのジレンマはゆっくりと彼女へ圧力を掛け 無垢な心に鋭いメスを差し入れていくのだった。








両手に紙袋、必要なものは全て買い お互いに紹介を終えたちぐはぐな三人は徒歩で本部へ向かっていた。既に太陽は彼女達の頭上に差し掛かっており 足元へ短い影を落とす。藍楽が足を上げれば 影もまた足を上げる――それは他の二人も同じ。先程のことを引き摺っていた彼女は こんなところはヴェルヴェットや骸と何一つ変わらないのに、と後ろ手を組んだ。するとそうこうしている内に本部まで辿り着き 骸はツナの部屋へ、他の二人は藍楽の部屋へと二手に別れる。しかし 彼女が不思議な人だったな、と長い襟足を見つめていると ふと骸は何かを思い出したように振り向き 靴音を響かせて戻って来るではないか。そうしてそのまま手を差し出せば ツナの如き爽やかな笑みを浮かべる。本能的に良からぬ考えを察知した藍楽は不審者でも見るような目を向けた。


「ああ藍楽、忘れるところでした」

「六道さん、忘れるって何を――痛ぅ…ッ!」






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あきゅろす。
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