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突然のリボーンの行動に彼女が驚いていると ヴェルヴェットが迫る黒人間から引き剥がす。小柄な藍楽は猫のように首根っこを掴まれ 先程リボーンに言われたことを脳内で反復、理解すると真っ赤になって拳を彼に一つお見舞いした。無論戦いの素人である藍楽の攻撃などプロの殺し屋へ当たるはずがなく難なく躱されてしまう。ヴェルヴェットは毛を逆立てて威嚇する猫の如く殺気を放つ藍楽をなだめ リボーンへ向き合った。


「何のようだ、遊びにきたんじゃないんだろ」

「当然だ。オレだって暇じゃねーんだ」

「全然そう見えませんけどね」


たいして攻撃力のない嫌味を放つ藍楽を無視し ヴェルヴェットへ小さなカードを一枚手渡した。ツナの署名が入っているところをみると名刺のようだがこれが一体なんだと言うのか、ヴェルヴェットがその意味を込めて訝しげな視線を送ると黒スーツの殺し屋は肩を竦めた。


「暇なら買い物行ってこい。会計時にそれを見せれば金を払わなくて済むぞ」

「え?何、どういうこと?」

「異世界から来たなら着替えの服とかないだろ。だから生活に必要なもの買って来いって言ってんだぞ」


お前が帰ってくる頃までには部屋を整えておいてやる、と告げるリボーン。確かにリボーンの言う通り藍楽は一文無しの手ぶら、着替えも何もあったものではない。だから彼の申し出は非常に有り難いもので 何か裏があるのではと少し警戒しながらも潤む瞳で丁寧に礼を述べると そんなに感謝されるとは思っていなかったリボーンは帽子を目深に被って照れを隠した。そうして背を向けると「じゃあ後でな」と去り際に藍楽へウィンクを残して部屋を後にする。

簡素な部屋に残された藍楽はヴェルヴェットからカードを受け取り これが何故現金代わりになるのかと思いを巡らせた。カードの上部にはオレンジ色の死炎印と呼ばれている炎が灯り 日本語とイタリア語でボンゴレボスの名前が達筆で記されていた。彼女の隣りでヴェルヴェットが時計を確認すると現在は朝6時30分を回ったところで そろそろ市場に活気が満ちる頃合である。ぐぅとお腹が鳴ったヴェルヴェットは 何よりも朝飯が先だと優先順位を決定し、その旨を藍楽へ告げれば二人同時になるお腹。ヴェルヴェットが町を案内がてら市場で朝食を食べないかと持ち掛けると 藍楽は柔らかい笑みで快諾したのだった。




賑わう市場。出来たてのピザを朝食に人込みを縫って歩くヴェルヴェットと藍楽。朝からこんなおいしいピザを食べれるなど滅多にないため藍楽は喜びに顔を輝かせ 初めて都会に出てきた田舎者のように忙しなく辺りを見渡していた。


「必要なものってなんだ?」

「一番は服で…あ、歯ブラシや洗顔道具も必要かな」

「はは、なんだか まるで修学旅行準備みたいだな」

「え?ヴェラは修学旅行行ったことあるの?」

「ん?あ、ああ…まぁ、な」


藍楽が何気なく放った問いに対し答えにくそうに返事をし 引きつった笑みでヴェルヴェットは微笑んだ。しかし不自然な笑みが浮かべられていたのは僅かな間だったため 少々鈍いところがあった藍楽は気がつかずに歩みを進める。市場のおばちゃんが元気よく呼び込みする声が青空に響き この辺ではあまり見掛けない少女を引き連れているヴェルヴェットは注目を浴びていた。そうこうしているうちに大方満腹になり 街の方へ行こうと市場を出る二人組。

ヴェルヴェットは本日彼女の世話役として一日休暇を貰ったため与えられた時間は十二分にあり 少女がイタリアの景色を楽しめるようにゆっくりとした速度で歩く。しかし藍楽と言えば市場を出てからずっと黙り込んでおり、突然の出来事に戸惑っているのだなと解釈したヴェルヴェットは、気分が明るくなるような楽しい店がある道を選んで進んでいった。目的の店が視野に入り ヴェルヴェットが到着を告げると 立ち止まって彼女を見上げる藍楽。




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あきゅろす。
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