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彼女の作業は夜中にまで及んだ。窓を締め切り どんな小さな破片さえも見逃さぬようにし 原因の箇所を組み立てていく。故障は配線が切れたことが原因だったらしく ディーノに調達して貰った新たな配線に取り替えれば再び使えるようになる。何もクッキーを食べていたから壊れたのではなかったのだ。取り替え作業も終わり 全て元のように戻すと コンピュータは再び動き始める。


「よっし……修理完了ーッ!」


深桜はやったやった!やり遂げた!と部屋で一人小躍り。こんなコンピュータを修理するなど最早プロの域に達しているとしか言えまい。彼女の歓喜の声を聞き付けて 父親と弟が部屋に来る。


「姉ちゃん、終わったのかー?」

「うん、あとは中身の情報ちょっといじるだけだよ」

「ははは、流石は俺の娘でぇ!」

「えへへ、そんな褒めると照れるって」


親バカな父親、山本剛。頑張った娘に寿司をご馳走し電源の付いているコンピュータを背に談笑すれば いつの間にか深桜は寝てしまっていた。全ての気力を使い果たしたのだろう。山本と父親は顔を見合わせ彼女を布団へ運ぶとそっと頭を撫で部屋を出た。


次の日彼女は燦々と降り注ぐ朝日の光で目を覚ます。時計を見れば朝の4時で 夢覚め遣らぬ心地で彼女はぼんやりしていた。昨日彼女は修理に精魂使い果たし 今日は学校に行ける状態ではない。なんとなく何か忘れている気がしなくもなかったが 大したことではないだろう、と再度眠りに落ちる。


ブブブブ…


それからどれくらい経っただろうか。ぬくぬくと布団にくるまり 気持ち良く眠っていると不意に枕元のバイブレーションが響き 深桜は再び目を覚ました。起こしやがって。そう悪態を吐いて携帯を開く。


『先輩、今日は来れますか?来れないなら僕が原稿作っておきます。

遠条』

「あ"」


なんて気の利く後輩なのだろうか。彼は深桜がコンピュータの修理をし 今日は疲れて来られないことを見越していたのだ。「後輩よ…!」と感慨に耽る深桜。遠条を深桜の代わりに局長に任命したほうが放送局のためになるかもしれない。

すっかり目が覚めた深桜はむくりと起き上がった。学校にはいかないつもりだが 取り敢えず空腹だったので 食事を取ろうと着替える。そうしてなんとはなしに 昨日修理したコンピュータへ視線をずらせば 電源が点けっ放しになっているではないか。


「うわ、電気代食っちゃうよ……って…ん?」


電源のついた5つの液晶にはパスワード入力画面らしきものが表示されていた。直したばかりなので全て初期化されているコンピュータ。パスワードはあってないようなものだ。昨日深桜は ディーノに入力を頼まれていたデータだけ入れておいたのだが それのパスワードのようだ、とカチャカチャと入力する。すると5つの画面が文字の羅列に変わる。その画面は深桜に非常に馴染みの深いものであった。


「これ…暗号?」


しかも簡単だ。そう呟き いつもの癖で読み解く深桜。彼女はいつの間にか解読にのめり込み 我を忘れてキーを叩いていた。







(ボス、あのデータまで渡しちまって良かったのか?)


(大丈夫だって、あんなの一般人がわかりっこないぜ)


cord.01了
 02に続く




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あきゅろす。
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