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「お疲れ様でしたー!」
冬休みが近付く頃、本番終了の合図を皮切りにスタジオにいる皆は一斉に力を抜いた。ゲストとして呼ばれていたツナや獄寺、山本もふぅぅと息を吐く。
「皆今日はありがとう。とっても良いクリスマス企画になったよ」
「あ、いえ…!…その、オレ何かヘマしてませんでした…?」
「10代目がヘマするはずないじゃないですか!…だよな、野球バカの姉!」
「あ、あはは…うん。皆よくやってくれたよ!改めてお礼言わせてね」
半ば脅しが入った獄寺の台詞へ同意を示す。呼び名が少々気に食わなかったがいつものことだ、と山本一家特有のおおらかさで回避し 早速スタジオの片付けに掛かった。「あ、オレも手伝います」と言ったツナに頷けば くせっ毛の髪の毛がふわりと揺れる。
「姉ちゃん、これあそこー?」
「ううん、それそっちー」
「あーあっちかー」
「…指示語しか使ってないのに何で通じてんだよ、アイツら」
「さ、流石姉弟…!」
繰り広げられる感覚会話に目を丸くしつつも後片付けに没頭するツナと獄寺。すると 深桜の護衛がロマーリオではないことにふと気が付いた。ディーノさんと喧嘩したと聞いていたがまだ仲直りをしていないのか。そんな疑問が頭を過ぎる。
「…あの、深桜先輩…まだディーノさんと仲直りしてないんですか…?」
「……べ…別に、あんな人知らないし」
パタリ、と一瞬止まる手。ディーノの名前を出した途端頬に紅葉を散らし 次いで彼女を取り囲むオーラが黒くなった。深桜は怒っているのか泣いているのか分からない表情でそっぽを向いた。聞かないほうが良かったらしい。自己反省をし そそくさと距離を取るツナ。
「やい、野球バカの姉!なんだその10代目に対する口は!折角10代目が心配してやってんのによ!」
「……あ…ご、ごめん…私そんなつもりじゃ…」
「深桜ちゃん、気にしなくて良いのよ」
落ち込む深桜の頭を優しく撫でる護衛。若い無口な女性で根掘り葉掘り聞いてこない――ロマーリオも多忙になってしまったために 彼女の護衛は別の人間が請負っていたのだ。恐らくはディーノから全て聞いているのであろうが、深桜にはそれが有り難かった。
あの日のことを思い出すと恥かしくて居ても立ってもいられない。ディーノは夢の中にまで姿を現し、あの時同様熱い吐息で口付けを落とすのだ。そして有りもしない言葉を耳元で熱っぽく囁けば 深桜の心は目茶苦茶に掻き乱された。最早どれが夢でどれが現実なのか分からず 一人スタジオで顔を紅く染めた。
ディーノからは毎日電話が掛かってくる。山本曰く内容は謝罪らしいのだが 妙な意地が邪魔して素直に聞き入れることが出来なかった。
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