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「この子、ディーノさんの恋人なのかな」


 手元にある盗撮写真には跳ね馬、その隣りに先日会った少女が写っていた。自分が持っている情報では雨の守護者の姉であるらしいが 護衛のようにディーノの部下を侍らせているあたり何かあるに違いない。写真を眺めつつ可愛かったなーなどと和んでいると 盗聴していたディーノ達に動きがあった。慌てて画面を切り替える。どうやらあの少女はおらず 今はロマーリオと二人きりのようだ。


『なーボス、直に会いに行って謝ったほうが良いんじゃないか?』

『俺だってそう思ってるさ。でも急な仕事が入っちまったんじゃぁどうしようもねーし……ったく、タイミングがわりーぜ…』


 消沈した声色がスピーカーから聞こえて来た。見合いパーティーの時にディーノと少女が喧嘩していたのは知っていた。だが仲直りどころか日本へ行く暇さえ見つからず 二人は喧嘩別れをしたままだった。


 『コマンダー』と言う新たな人物の存在を知ったディーノ。それが敵なのか、それとも味方なのかは分からないが その人物を見つければ何か情報を掴めるかもしれない。そう考えたキャバッローネ10代目は捜査の手を警察や非同盟マフィアにまで広げていた。しかし大変な作業な為自ら指揮を取らなければならず お陰で日本に帰れず終い、深い溜め息と共に会話は続いていく。


『で、俺は肝心なことをまだ聞いてないんだが…ボスは深桜嬢が好きなんだろ?』

『ぶふっ!ろ、ロマーリオ何…!?』

『俺は真面目だぜ。…どうなんだ?』

『……ああ、好きだ…』


 どうしようもないくらいな、と放たれた言葉には後悔と愛しさが満ちていた。この会話から恋人の線は消える。だが気になっていた肝心の表情は カメラに背を向けられていたために分からなかった。グイードはヤキモチ少女と若きボスを比べながら くすりと笑みを漏らした。


『ほんとは、会いたくて仕方ないんだろ?』

『当たり前だろ。…だけど……俺にはそんな資格――おい、何だこれ?』

『は?』


 ガタガタと画面の中が揺れる。車内に設置していたカメラが大きな手で覆われたかと思えば 突然砂嵐に変わった。そうしてグイードの顔を照らし出す画面には雑音のみとなる。電波が絶たれたところを見ると盗撮カメラの電源を切られたようだ。


「あっちゃー…気付かれたか」


 ま、他にもあるし良いか。たいして慌てた風でもなくキーをいじる。すると今度は別の角度から写されたディーノの姿。満足そうにエスプレッソを口に含み 慌てて他の盗撮カメラを探している彼等を眺めた。


「…うわ、苦い」


 酷く濃いエスプレッソコーヒーに顔をしかめる。父親がカプチーノしか飲まないものだから苦いコーヒーには慣れていないのだ。グイードは イタリアの人達はよくもこんなのを飲めるな、と感心しつつ 己自身を戒めるように全て飲み干したのだった。





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あきゅろす。
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