ページ:1 「ははは、ディーノさんすっごく怒ってたなぁ…」 「ぼんやりするな、グイード。言付けておいた仕事は出来たのか?」 「ああー…はいはい、ご心配なく父上。貴方の望むままに、全て進めてさし上げますよ」 少しずつ解かれる鎖。海底に繋がれし錨は上げられ 盲目の指揮官は帆を張った。激動の時代――狂ったコンパスを片手に 暗号がうごめくブラックホールへと足を踏み入れた。 Code Spiral code.08 パスワード 峰のように高い鼻。厳格な表情をした色白な男は 呑気な返事を返す息子へ鋭い視線を投げ掛けた。だがグイードは目も合わせず コンピュータの画面を見つめたまま。それを少しの間見下ろしていたアメデーオは 苛立ち混じりにカプチーノを喉へ流し込んだ。 「我々の邪魔をする跳ね馬へ、血の雨を降らせてやるのだ。手を抜くなよ」 「分かってますよ。…でも、わざわざ教会を選ぶなんて父上も物好きですね」 「信仰する神が己へ救いの手を伸ばしてくれないと言う絶望を、しかと味合わせてやろうと思ってな」 「…ほんと、しょーもない人だ」 扉が閉められる音を背中に聞きながら キーを打つ。グイードが深桜と初対面してから3週間、街中至る所クリスマスムードで満たされ 街行く人間達は神聖な夜をまだかまだかと楽しみにしていた。 「大体何で造反なんか…上手くいきっこないのにさ」 ぶつくさ文句を零すグイード。画面にはキャバッローネ縄張り内にある教会周辺地図が映り クリスマス奇襲計画の準備が着々と進んでいることを示していた。ディーノへ好感情を持っていた彼は 父親がいないのを再確認すると再び悪態を吐き始める。こんなことなら ドイツにいる祖父の元にいたほうがマシだった――父親よりも遥かに厳しい人だけども。 グイードの家系は代々 鉄血政治をひいたビスマルク信者だった。武力が全てを制すと信じきり ビスマルクの鉄血政治を信望し己を鍛える日々。だが憧れのビスマルクと違い ボス達には些か冷静さ及び才覚が足りなかったため 彼らの率いるマスケローネファミリーは闘いと頑固さだけが取り柄、と認識されるようになってしまっていた。それゆえに 同盟ファミリーの中でも随一の武闘派と化しているのだが。 しかし脳みそまで筋肉と思われていたマスケローネファミリーも 近年頭脳戦を繰り広げるようになって来た。その理由は簡単、息子のグイードが情報戦を得意とするからである。機械、暗号、戦略に長けた息子に影響されて アメデーオは情報や頭脳戦の大切を知ったのだ。ゆえに元々あった武力に頭脳もプラスされ マスケローネファミリーは目を見張る速度で力を付けて来た。 [次へ#] |