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キャバッローネとて馬鹿ではないのだ。ゲルマン系、そしてリストに載っている、となれば大体は敵の見当は付くというもの。更に言えば ヴァリアーから暗殺対象にされる理由と言えば――反逆を企む者の他にはない。


『裏切り者を殺せ』


これはファミリーの鉄の掟。遥か昔から厳守されてきた由緒あるものだ。最もヴァリアーの場合は その類い稀なる戦闘能力を買われているため保留にされているが 基本的には裏切り者には死を与えられる。相手はカタリーナへ挨拶をし終えると薄ら笑いを浮かべつつ世間話を始めた。


「ボンゴレの後継者が決まったとお聞きしましたが…貴方の弟弟子だそうで」

「えぇ、骨のあるやつですよ」

「それは羨ましい!私の息子など、本当に10代目にしても良いものかと悩んでしまう程やる気がなくて困っていましてね…リボーンさんに鍛えて頂きたい程だ」


やれやれと嘆くアメデーオ。話題になっている息子のグイードもリストに載っていたはずだが 姿が見えない。俺は彼とは多少なりとも交流があった。しかしあの穏やかな息子が自分から造反を企てるとは思い難く 父親であるアメデーオに無理矢理協力させられているのでは、と考えを巡らせた。


カタリーナも交えて上辺だけの会話を交わしていると ロマーリオと深桜が会場に入ってきたのが見える。安堵が俺の身体を包み 深桜に駆け寄って抱き締めたい衝動に駆られた。ロマーリオが足早にこちらへ向かい その後ろを俯いたままの深桜が付いて来る。


「(ボス、万事成功だ)」


ロマーリオは俺がアメデーオと会話していることに一瞬目を見張ったが 彼に悟られぬよう小声で結果を告げる。未だに目を合わせてくれないが 深桜が打破した謎なぞが俺達に希望をもたらしたのは明らかだった。もしかしたら彼女はキャバッローネの勝利の女神なのかも、なんて恥ずかしい考えが浮かぶ。俺はカタリーナとアメデーオに断りを入れ ふわりと深桜の手を取った。


「あのさ…色々悪かった。でもお前のお陰で助かっ」

「私に気安く触んないでください」

「いで!」

「あら」


俺の言葉は途中で遮られ 手をベシッと弾かれる。彼女の機嫌はパーティーが始まる以前よりも更に悪化しており 仏頂面で顔を背けてしまった。カタリーナから送られる憐れみの視線がさり気なく痛い。


「ぶっはは!完全拒否されてるぜ、ボス!まー当然っていやぁ当然だろうけどな!」

「ふむ…自分のボスに対して随分と無礼な娘ですな」


おいロマーリオ、お前そこ笑うとこか。しかしアメデーオは彼女を俺の部下だと思っているため 感心しないと言った様子で深桜の品定めを始めた。一抹の不安が過ぎり 何かあってからでは遅い、と深桜を会場から遠ざけるようロマーリオへ指示を出す俺。去り際にロマーリオが「過保護だな」と笑っていたが 構うものか。大事なものは何としても守る、それが俺の信条である。


ふと ロマーリオに連れられて深桜が俺の側を離れた時 一瞬深桜が振り向いた。彼女の酷く切ない瞳は悲しみと微かな怒りを称えており 俺は近頃無縁だった強い金縛りに掛かけられる。その早鐘を打つ胸にブスリと針を刺されたような感覚に息を飲み――不意に彼女の頬に残る涙の跡に気が付いた。

ああ、やはり深桜は泣いていたのだ、また俺は泣かせてしまったのだ。彼女へ何か優しい声を掛けてやりたいのに 喉がつっかえて言葉が出ない。もう自分にはその資格がないから言えないのだろう、と自嘲気味に緩く口角を上げた。



少しだけ伸ばされ またすぐに引き戻された俺の手。カタリーナが慰めるようにその手を包み 元気を出してと言う。彼女は聡い女性だから今の一瞬で気付いたのかもしれない――俺が 深桜を愛してしまっていると言うことに。


花弁が舞い踊る様を連想させる絹のスカート――桜の精と化した深桜は俺の元を飛び立ち 指の間を易々と擦り抜けていくのであった。







(ししし!深桜、お前苛めがいありそうで気に入ったぜー)

(え、何言…んぅ?!…な、わ、わわ私のファーストキスがぁぁー!!)

code.06了
07に続く


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ベルはさり気なく深桜の唇を奪ったのでした。←

※トロイの木馬とは
パソコン用語。プログラムを実行した時点でファイルを使用不能にするなどの破壊活動を行う不正プログラムのこと。他のファイルに感染しないのでコンピュータウイルスとは厳密には異なるらしいです。



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あきゅろす。
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