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「うおぉぉい!ベル、てめー何度8出せば気が済むんだぁ!!」

「仕方ねーじゃん、4、6ときたら8しか出せねーんだから」

「言い訳すんじゃねぇ!!」

「…ん…?」


騒がしい彼らへ視線を向けると 図らずも意味深な視線を投げ掛けるスクアーロと目が合った。何か言いたそうな瞳に私は首を傾げる。


「……っ…あー!分かった!分かりましたよロマーリオさん!」

「本当か…!?」

「はい!」


急ぎキーボードを引っ掴み 『10』を入力、そして本日お世話になるのは何度目か分からないエンターキーを叩いた。途端に画面の点滅は止み 『commander』の文字が真ん中に鎮座する画面へ切り替わる。どうやらスクアーロの機転によって最悪の事態は回避したようだった。冷や汗を拭うと ロマーリオさんとハイタッチを交わし スクアーロへ向けて目尻を下げた。優しい彼は 私が成功したことが分かると ふい、と顔を背けてしまう。


「あらーん?その様子じゃぁ解き終わったのかしら?」

「うわ、つまんねー。カス鮫が余計なヒントやるからだぜ、カス鮫が」

「誰がカス鮫だぁ!一番でっけぇヒント出しやがったのはてめぇだろぉぉ!!」


喧嘩ばかりしている彼らだが 案外仲は良いのかもしれない。私はフゥッと息を吐き 何故未使用のカードが分かったか怪訝に思っているロマーリオさんへ説明を始めた。


この謎なぞの秘密はこうだった。


スクアーロの発言で気が付いたのだが 彼らは終始一貫して偶数数字しか出していなかった。そこで4、6、8と並べていくと 8の時点で全て流されるため10は出せない。そして次のターンから10を出すのかと思いきや 私の記憶が間違っていなければ彼らは12で始めていた。ならば必然的に10は使用されないままになる、という経緯だったのだ。確かに至極簡単な謎なぞではあるが 私がルールを知らなかったらマーモンはどうするつもりだったのだろうか。


解き終わった私は緩む頬と共に説明すると ロマーリオさんは よくやった!と破顔して私の頭を掻き混ぜた。ビールなんて持っていたら ビール掛けでもおっ始めそうな勢いである。そうしてしばらく和んでいると喧騒も鳴り止み マーモン達がわらわらと集まって来た。


「全部解きましたよ」

「ム、それくらい当然のことさ。『commander(コマンダー)』…それがリストに関する最大のヒントだよ」

「コマンダー……って、何?」

「君って…」

「な、何その馬鹿にした目…!」

「はぁ…コマンダーは指揮官ってことくらい俺達だって知ってるさ。そうじゃなくて、訊きたいのは――」

「――それが一体何者かってことかい?」


分かってるなら一々馬鹿にしないでください。というか私だってコマンダーの日本語訳くらい分かります。彼と話していると本当に自分が馬鹿になったように感じられて 蹴り飛ばしたい衝動に駆られるが 我慢我慢。私達は雨が降る様にポツリポツリと語られるマーモンの話へじっと耳を澄ませて聞いていた。





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