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永劫に続くかと思われる謎なぞ。それに対峙しながら 私はふと金色に輝くディーノさんを思い浮かべた。今頃は綺麗な女の人とお見合いをしているのだろうか。偶然にも我が愛すべき放送機器と同じ名前であった見合い相手はとても美しく 彼女がディーノさんの隣りに立てば彼の格好良さと相俟って そこら一帯は輝かんばかりだろう。
考え始めると止まらない思考に私は目眩がした。グルグル、グルグル、心の中でどす黒い嫌な感情がとぐろを巻き ギュウッと心臓を鷲掴みにされたが如く息が苦しい。私はこの感情を知っていた。だがこの感情を抱く理由が分からない。抱く理由なんて、ない。
黒背景に緑字の羅列。沈んだ心を奮立たせ意識を画面へ向けると 次に私達がやるべき事が表示された。今度は何処かへハッキングをしなければならないらしい。私はカタカタと高速でタッチタイピングを披露しつつ この部屋に唯一ある出入り口を一瞥、ディーノさんが来てくれないかな、なんて淡い期待を抱くも 開く気配は全くない。
――この場に彼がいてくれたなら。
そして隣りで励ましてくれたならば こんな心強いことはないだろうに。どうして彼はいないのだろう。どうして彼は――本当は部屋に入った時から緊張で泣き出しそうで ふとしたことで心にピーンと張っている糸が切れてしまいそうだった。けれど私は奥歯を強く噛み締め 気を緩めれば意識を失い兼ねない自分を強く保ち続けた。
「大丈夫か、深桜嬢…?」
「全然っ大丈夫です!こんな謎なぞ目じゃありません!」
「俺が心配したのはそっちじゃなくて、深桜嬢自身のことなんだが」
「何言ってんですか、ロマーリオさん。早く解いて美味しいご馳走を食べなくちゃいけないんですから、こんなんでヘコたれてる訳にはいかないんです!」
「ははは…そうだな、その通りだ!」
きっとロマーリオさんは 私が強がってることなんてお見通しなのだろう。けれどみっともない自分を見せたくなくて 私は意地を通し続けた。鼻の奥がツーンとするも懸命に我慢をする。
「で、出来た…!」
努力は必ず報われる、そんな格言があったような気がする。ともすれば震えてしまう手を抑えながら止めのエンターキーを叩けば どうやら指示された場所へのハッキングは成功したらしく砂時計が現われる。ハッキングまでしたのだ、この先には最大のヒントがあるのだろうと期待に満ちた二対の瞳が画面を見つめ――が、しかし、成功かと思いきや予想だにせぬ事態が起きた。
――ビー!ビー!ビー!ビー!
「な、なななにこれ…!?」
「まずい…!これはウイルスだ!パソコンが壊れちまうぜ!」
「えええ?!ちょ、ま、待ってウイルスぅぅ!!」
そう、ハッキング先からパソコンの機能を破壊するウイルスが送り込まれて来たのだ。画面一杯に『unused card(未使用のカード)』と表示され 完全に制御不可能。
しかしパソコンを破壊されるのはマズい。非常にマズい。なんたって今までこれを使って謎なぞを解いてきたのだ。これがなければ今までの苦労は水泡に帰す。青や赤に点滅する画面を目の前に私は出来得る限りの対処をしたが 全く歯が立たなかった。
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