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「お初にお目にかかります、ディーノ様。姪のカタリーナですわ。どうぞお見知りおきを」

「ああ、これはどうも、カタリーナさん。キャバッローネ10代目のディーノです」

「ふふ、素敵な方でほっとしましたわ。けれど…何かお加減が宜しくないようにお見受け致しますが…」

「え…?あ、いえ、どうぞお気になさらず。大したことではありませんから」

「それなら宜しいのですけど…ね、私と一曲踊ってくださいませんこと?」

「…俺で宜しいのならば、喜んで」


華奢で可憐なカタリーナ。流れるような仕草で手を差し出した彼女をエスコートし 広場の真ん中まで行けば 瞬く間に会場の視線は一点に集中する。「お似合いの二人だ」と口々に称賛する科白に 心の中でしかめっ面をしながら ステップを踏み始めた。社交に必要なことは リボーンが家庭教師だった頃に一通り叩き込まれていたため 難なく動く身体。

深桜とは違う成熟した女性のカタリーナに ディーノの鼓動は少しだけ高まる。だがそれは人間の摂理に従っているものであって 深桜に感じるものとは些か異なっていた。カタリーナからは あの少女を想う時のような『愛しい』という感覚は溢れて来ないのだ。


イタリアより帰って来てから気が付いた 心の奥底にある己の感情。否、以前から惹かれていたことは頭の何処かで気が付いてはいた。だが彼女を危険な世界へ巻き込みたくない一心で自分の心を誤魔化し 深入りしないようにしていたのだった。

思い出したくもないのに 最後に彼女が見せた 酷く悲しそうな瞳が脳内に蘇る。やはり事前に伝えておくべきだったのだ、と今更ながら悔やまれるも 後悔先に立たず。ディーノと出会ってから彼女が流した涙は 全て自分のせいなのだと罪悪感が彼の真直ぐな心を包み込んでいった。


「ディーノ様…やはりお辛そうですわよ」

「…大丈夫です。カタリーナさんは、お優しい方だ」

「まぁ、ご冗談がお上手ですわね。でも 私も貴方がお優しい方みたいで嬉しいですわ。だから――貴方に一つ、良いことを教えて差し上げましょう」

「良いこと…?」


カタリーナは色香の漂う華やかな笑みを浮かべると ディーノへゆっくりと顔を近付ける。そうして小声で彼に耳打ちをすれば 顔を離して楽しそうに鈴の音のような笑い声を漏らした。そんな彼女とは対照的に 信じられない、といった様子で目を見開き 小声で返すディーノ。


「貴女が今言ったことは、本当なんですか…?」

「勿論…ナンバー2の名に懸けて真実だと申しますわ。警察署で手に入れたとある暗号にそう書いてましたの。ボンゴレ用語で二重に暗号化するくらいですし、信憑性は高いでしょう」


まぁどなたかのタレ込みと言うことになりますわね、と呟くカタリーナがもたらしたのは 非常に貴重な情報だった。それは、何者かがキャバッローネ奇襲を示唆する暗号の存在。奇襲をされる理由は?と問われたら 思い当たる節があるなんてものじゃない。犯人はおそらく先日自分や深桜を襲った者達。だが奇襲をされる日時も場所も分からないのでは手の打ち様もなく ディーノの背中を冷や汗が流れた。

もしかしたら今この瞬間にだって奇襲を練っている人間がいるかもしれない――なんたってこの会場には リストの一番上に載っている人間も招待されているのだから。先程まではずっと少女の心配をしていたが、彼女よりもディーノのほうがよっぽど危険な立場に立たされていたのだ。




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あきゅろす。
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