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「貴様…やはり雨の守護者の姉だけはあるのか」
「う"ぉ"い"…マーモン、一つ分からねぇことがあるんだが…どうして一般人のそいつが解けたんだぁ?あれにはボンゴレ用語で二重に暗号化されていたはずだろぉ!」
「たまたま うちのボスが解読用コンピュータを貸してたから、それが勝手に解釈しちまったのさ」
「あ"ぁ"…なるほどなぁ」
納得納得、と視線を私へと移す彼。この特徴的な話方は、少し前に武と会話していた人では無かろうか。緊張の余り口が利けない私の代わりにロマーリオさんが返答を投げ返せば同意する様にコクコクと隣りで頷く私。
まるで尋問のような時間は始まりと同じく突如終りを告げ、マーモンと呼ばれた彼はぽーんと後方へ跳躍した。そして体重を感じさせぬ華麗さで食卓へ着地すると 何か魔術でも唱えるような口調で語り始める。
「さて、君がここでやるべきことは只一つ、僕が出す暗号を解けば良いだけさ。…まぁ暗号だなんて言ったけど、そんな高級なものじゃない。小学生レベルの至極簡単な『謎なぞ』だよ」
「よーするに、あんたが何個のヒントに気が付けるかにかかってるってこと。言っとくけど、王子は手伝わねーぜ」
「あーそうそう!マーモンによると、暗号解読は最初っから始まってるらしいわよぉ」
「はぁ!?」
おいおい。そういう重要なことは始めに言おうよ。ディーノさんといい、彼らといい、マフィアは大事な情報を後でいきなり与える傾向があるのだろうか。私は理解しているようなしていないような曖昧な返事を返し 顔を引きつらせた。
マーモン曰く私のテリトリーはこの食堂内。テリトリー内ならば自由に動いて良いそうだ。しかしこの中から何かヒントを見つけ出せなどどれだけの体力が必要になると思っているのだろうか。
ふと、紅瞳の人――ザンザスと言う人だろう――の側に ノートパソコンが配置されているのが視界に入った。なんだか不自然だ。彼が使っている訳でも無さそうなのに電源が付いているのは、恐らくマーモンが出したヒントの一つだからだ。
私がノートパソコンに目を付けたことが マーモンにも伝わったのだろう。彼はクスリと声を鳴らし 意味深な様子で謡う様に言の葉を紡いだのだった。
「せいぜい頑張ってよね、山本深桜。このゲーム…君には勝ってもらわなきゃ困るんだから」
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「くそ…」
煌びやかな照明。あの後後ろ髪を引かれつつ見合い会場へ到着したディーノは 今頃マーモンと対峙しているであろう深桜の側へ 自分が居てやれない悔しさに強く拳を握り締めた。
だがこの場を離れ深桜の元へ行くことは約束違い。ナンバー2ファミリーのボスと交わした約束を反故にすれば途端にヴァリアーとの連絡手段は断たれ 捜査を続行することは不可能となってしまう。だから約束を守る姿勢を見せるためにも 彼は見合いの席にいなければならないのだ。
『君が私の姪との見合いを受け入れれば、ヴァリアーとの面会許可を降ろそう』
リング戦後、ヴァリアー達の監視を受け持っているのはナンバー2ファミリーの幹部だった。したがって彼らの許可無しにマーモンと接触することは不可能、その不利な状況下においてナンバー2ファミリーのボスは『ヴァリアー』という餌を武器に 以前から持ち掛けていた見合いをする、という約束を上手いこと取り付けたのだった。
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