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「引き受けてくれるのか…!ありがとうな!」

「べ、別に……でも、そんな大事なこと、どうして日本にいる時に教えてくれなかったんですか?」

「あー…それはだな、深桜が嫌がって来てくんねーんじゃないか、と思って…」


なるほど。要は私に逃げられると困るから黙っていたのか。そもそも考えてみれば お見合いパーティーに部下全員を出席させる理由などない。しかし彼は部下全員をイタリアへ帰らせた――つまりそれは 私の護衛を無くしてイタリアへ強制連行する口実を作るためだったのだ。

騙された感が拭えず 私を取り巻く不機嫌オーラが濃くなるのが自分でも分かる。ディーノさんは「ごめんな?」だなんて言っているが そう簡単に許してやる気にはなれない。私は口をへの字に曲げたままドアノブへ手を掛けた。


「あ、おい!その中にゃヴァリアー幹部がいるんだ、一人で行くと危ねーって!俺も一緒に行」

「ボス、残念だがもうパーティーの時間だぜ」

「げ…マジかよ…」


罪悪感に苛まれた引きつった顔つきのディーノさん。騙されたことで急上昇していた私の怒りゲージはそこで頂点に達し 私は小さな、それでいて妙にハッキリとした口調で彼へ告げた。


「ロマーリオさんが付いていてくれますから…ディーノさんは行ってください」

「いや…でも、それじゃあお前が…」

「私のことは気にしないでください。私、分かりましたから――ディーノさんは、立派な本物のマフィアだって!」


立ち尽くす彼へ声を荒げて冷たく言い放つと ロマーリオさん行きましょう、と勢い良く扉を開く私。前を見ずに足先を見つめたまま部屋に入ると 後ろにロマーリオさんが続く。図らずも頬を伝い流れる涙を ロマーリオさんが心配そうに眺めているのが分かって私は自分を叱咤した。


――ディーノさんが何だ、マフィアが何だ。泣くな自分。


彼に関わるといつも私は泣いている。弱い自分に嫌悪感を抱きながら雫を払い、ふと暗殺者達に襲われた時に感じた寂しさが現実のこととなってしまったことに気がついた。ディーノさんは純粋そうに見えてもやはりマフィアだったのだ。一般人に マフィアが裏で何をしているか、何を考えているかなんて分かるはずがない。海水魚は海に、淡水魚は川に。元より住む世界が違うのだから分かり合えるはずがないのだろう。


そうして私が深呼吸をしていると楽しそうな明るい声が響く。


「ししし!跳ね馬のやつ泣かせてやんのー」


ロマーリオさんが私を励ますように隣りに立ち 不意に今自分はヴァリアー幹部達がいる部屋にいるのだ、と思い出した。それと同時に『暗殺部隊』という文字が脳裏を過ぎり 私の身体は恐怖に包まれる。私が恐る恐る足元から視線を離すと 部屋の真ん中には巨大な食卓テーブルが鎮座しており 一様な黒服に身を包んだ人間達がカードゲームをして遊んでいたところであった。


「う"お"ぉ"い"…こんな小娘があのリストを解いたのかぁ?嘘だろぉ?」

「ム…スクアーロ、そうやって見掛けだけで相手を判断するから雨の守護者に負けたんだよ」

「う"お"ぉ"ぉ"い"!てめぇだって負けたくせにデカい口叩いてんじゃねぇ!!」

「もー…ちょっと二人とも、大事なお客様の目の前で喧嘩しないの〜!」





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