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「ゲルマンって言ったらドイツとか…もしかして国際紛争ですか?」

「いや、違うな。俺や深桜だけを狙うところを見ると、多分リスト関係だ」

「でも何で私が解いたって分かったんでしょう…?」

「「……」」


私が解いたと知っている人間はキャバッローネでさえ5、6人。ならばバレる筈がない――スパイさえいなければ。しかしディーノさんはその線は有り得ないと主張し 話はまた降り出しに戻ってしまった。


「そういえば、私に銃を向けた人…私のことを『Joker』って呼んだんです」

「ジョーカー?深桜嬢のハンドルネームか何かか?」

「まさか私がそんな悪役っぽい名前使うはずないじゃないですか」


似合いません、と否定すれば ますます謎は深まっていくばかり。これは迷宮入りしそうだと考えた私達は 取り敢えず今回は無事で良かった、と祝福し合った。まだ恐怖が頭から離れず ぎこちない笑みで対応する私。するといち早くロマーリオさんが不自然に気が付き 私に目線を合わせてにっこり微笑んだ。


「深桜嬢、怖かったのによく頑張ったな。もう泣いて良いぜ」

「…泣くなんて誰も言ってないんですけど」

「強がったって分かるんだぜ。我慢するのは良くない…一回泣いちまえばスッキリするぜ?」

「………私…別に…」


優しい言葉が涙の防波堤を崩す。武だって沢山戦って怖い目に合ってたのだから 姉の私はもっとしっかりしなきゃ、なんて考えていたのは何処な行ったのやら。大粒の涙を我慢しようと唇を噛む私を ディーノさんがそっと包み込む。するとその体温は酷く心地よく、止まらぬ涙と共に彼にしがみついて小一時間程泣いていた。

戦いなんてものとは全く無縁に過ごしてきた私。有り得ない現象に遭遇し あまつさえ殺されかけた挙げ句、自分が助かったと思ったら自ら命を経つ異様な光景を目の当たりにした。ディーノさんやロマーリオさんはいつもこんな世界で生きているのか、と彼らが酷く遠い世界で生きているように感じ 言い知れぬ寂しさが私の心を埋め尽くして行ったのだった。


泣きやむと例によって例の如くディーノさんが泣き腫らした顔を覗き込む。それいい加減止めて欲しいなどと思いつつ顔を逸して腕から抜け出した。今思えば、しがみつくなんて大胆な行動をしたものだ。私が顔を赤くしているとロマーリオさんが何やらディーノさんへ耳打ちをし 二人で納得顔で頷くと私へ視線を移す。ニカッと太陽の笑みを浮かべると言葉を紡ぐディーノさん。


「なあ深桜、泣きやんですぐこんな話をするのもなんだが、俺すぐにイタリアへ戻んなきゃなんねーんだ」

「帰ってきたばっかりなのにですか?」

「どうしても外せない用事があってよ…で、ものは相談なんだが、お前も一緒にイタリアへ来ねーか?」

「う"っ…ごほ!ごほ!」


彼は本当突拍子もない。摘んでいたチョコレートが気管に入り咳き込んでしまった。なんで私がイタリアに行かなきゃなんないんですか!と問い詰めれば 「仕方無いだろー」なんて返ってくる。





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