[携帯モード] [URL送信]
ページ:5



引き金が引かれたのと その声が聞こえたのはほぼ同時。いや、私の名を呼んだ声のほうが若干早かったかもしれない。自分が死んだのかも判断出来なかった私は 目の前で繰り広げられる出来事を ただただ見つめていることしか出来なかった。


銃声と共に吹き飛んだのは、暗殺者。彼の身体にはしなやかな鞭が巻き付き それが彼を吹き飛ばしたようだった。そうして私が声のした方向を振り向くと そこにはロマーリオさんと金色を振り撒くディーノさんがいて 軽々と敵を蹴散らしている場面であった。

いつものヘナチョコは何処に行ったのやら、今のディーノさんはとても強い。少し鞭を振るうだけで敵が吹き飛び 彼には指一本、銃弾一つすら触れることは出来ない。そうしてディーノさんは私の側に駆け寄り まるで大切なものを庇うように立ちはだかった。その背中が酷く格好良く見えて 思わず目を奪われる。すると彼は肩越しに私を見て焦躁した声色で口を開いた。


「深桜、怪我は!?」

「あ、な、ない…です…」

「そっか…良かった…!」


本当に安心した、と言った微笑み。事態に付いていけない私も釣られて笑みを浮かべればディーノさんは何故か一瞬惚け、それから気を取り直したように再び鞭を振るったのだった。




学校に静寂が訪れたのはそれから10分程経ってから。廊下には屍の山、壁や床には血痕が飛び散り その光景はさながら地獄絵だ。ディーノさんは彼らに歩み寄り 「何者だ」とか問うていたけど、不意に硝煙臭が漂ってきたと思ったら 彼らは口封じとして自ら自爆をしてしまった。私はその間ずっとディーノさんに守られており なんとか無傷ではあったが その光景は何ともショッキングな映像で意識がふっ飛ぶかと思った。


「恭弥、深桜を助けてくれてありがとな!」

「言っとくけど、放送局長を助けるために彼らを咬み殺したんじゃないよ」

「わーってるって!でも結果的には深桜は助かったんだ、礼を言うぜ!」

「……勝手にすれば」


あ、雲雀君照れてる。親しげに話す二人を観察していると 珍しいものを見れて少し笑みを漏らした。何でも彼はディーノさんから学校に暗殺者が来るかも、と電話をもらい 侵入者を咬み殺すために校内を見回っていたらしい。

そうして私も彼にお礼を告げ 「家で説明する」と言ったディーノさん達と共に家へ帰った。ほぼ放心状態だった私は 自分がどうやって家に辿り着いたか覚えていない。シャワーを浴び 綺麗になった姿で私の部屋に集まる一同。


「さて、深桜嬢…まず最初に怪我はないか?」

「……無いです」

「そりゃー良かった!…で、さっきのことなんだが――」

「――さっき深桜を襲ったやつらは、つい最近俺がイタリアにいた時に襲ってきたやつらと同じだろう」

「ディーノさんを…?」


オウム返しの台詞に神妙な面持ちで頷くと ディーノさんは事件の経緯を説明した。話によると 彼はとある人物に会いにイタリアへ帰っていたらしいが 飛行機に乗り込む寸前何者かに襲撃を掛けられた。しかし倒して口を割らせようとすると 今回同様自爆をしてしまうため何処の人間かも分からない。ただ一つ、前回も今回も皆ゲルマン系の顔つきだと言うことだけ分かっていた。言われて見れば私に告げられた言葉の響きは英語ではなかった。




[*前へ][次へ#]

5/7ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!