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しかし考えに耽っていた私は ここで何かがおかしいことに気が付いた。ずっと職員室へ続く廊下を進んでいた私。なのに一向に辿り着く気配はなく 妙に胸騒ぎがして後ろを振り向くと 廊下はあるものの教室や窓と言ったものが一切合切消失していた。


「すっごく、嫌ーな予感がする…」


私の数メートル後ろからは まさに壁に囲まれた要塞。ふと 突き当たりの壁が段々迫っているように見えて私は目を凝らし それから思わず絶句した。壁が迫っていると思ったのは間違いで、廊下の空間自体が失われているのだ。

全く未知の経験に遭遇した私を 酷いパニックが襲った。カタカタと膝が震えて笑い声を上げ 肺はまるで息の仕方を忘れてしまったかのよう。それでも本能は逃げろと言って 私は何かに動かされる操り人形の如く一目散に駆け出した。

怖い、怖い。一体何が、どうしてこんな。様々なことが脳内を支配して行き 恐怖に固まった身体を本能が懸命に動かすも、反対側の突き当たりで立ち止まってしまった。何故って、反対からも空間の浸蝕が始まっていたからだ。窓も何もない左右、前後から迫り来る無。成す術もなく目を瞑って立ち尽くす私の瞼に ぼんやりと金色の人が形作られていった。無意識にヘナチョコな彼の名を呼ぶ私。


「ディーノさん…!」


その時だった。何もない無の空間にヒビが入り 硝子が割れるような音と共に鈍く光る銀色が姿を現す。それに続いて繰り出される第2撃に ひび割れた空間は耐え切れぬといった風に崩れ落ち 私がはっきりとした意識を取り戻した時には目前に雲雀君が立っていた。


「君…そんなところで何してたの?」

「……え…ええ?」


突然の変化に私は茫然とするのみ。辺りを見渡せばそこはいつもの廊下で 夢でも見ていたのか、と頬を抓った。同時に 目の前の彼がディーノさんではなかったことに少し落胆を覚える。しかしちゃんと窓があることに安心したのも束の間、今度はその窓を割り雄叫びを上げて何者かが侵入して来たのだった。彼らが手に持っているのは銃――ではないと願いたい。


「な、さ、さっきから何なの――!?」

「ふうん、これが彼の言ってた暗殺者か……不法侵入及び器物破損で、君達全員
咬み殺してあげるよ…!」

「あ、暗殺者ぁぁ!?」


湧いて出てくるとはこのことを言うのだろうか。銃を持った人間達を雲雀君が幾ら倒せども 彼らは次々に窓から侵入。私は尻餅を付いて雲雀君の鮮やかな戦闘に見惚れていたが、そのうちの一人が彼の攻撃を掻い潜ることに成功し 私の方向へ駆けて来た。私は立ち上がる暇もなく眉間に銃口を押し付けられ 暗殺者と思しき人間は一言告げる。


「A de,Joker!(じゃあな、ジョーカー!)」

「…っ…深桜!!」







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あきゅろす。
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