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「な、ロマーリオさん何言って…!」
「深桜嬢あの電話の後、何だかんだ言ってボスが帰ってくるの楽しみにしてたもんなー。なのに帰ってきた途端、熟睡しちまうたぁ…」
「わ、私は別に…!」
「いやほんと、うちのボスはレディの心が分かってねーよな」
人の話聞けよ。そんなツッコミが口から滑り出て行きそうだったが 寸でのところで飲み込む。ロマーリオさんは「ったく、だらしねーぜボス」なんて呟いているが どうも一人で自答することが多い彼の考えは分からず 私はマイクを拾うと折り畳みイスに腰掛けた。
確かに今日は訳も分からず苛々している。企画で忙しいせいだと言い聞かせていたが もちろん言い訳だとは気が付いていた。今ディーノさん何してるかな、と考えている自分に気が付き それらを追い払うように頭を振る。
だって、別に私とディーノさんはそんな関係なんかじゃない。ただの、一般人とマフィア。彼のことが気になるのはディーノさんが非常に頼りないからついつい心配してしまうからであって、恋愛感情だからではない。不思議な程必死に自分に言い聞かせ 機械室とスタジオを隔てる大きなガラスを見やった。
すると遠条君がうたた寝をしているではないか。疲れているのだろう、何やら静かになったなと思ったら そのせいだったのだ。普段は口うるさい後輩で 私より年上なんでは、と思ってしまう程だが 黙ってたらそれ相応に見える。
彼がうたた寝なんて相当疲れているに違いないと判断した私は 本日の解散を告げた。号令を聞くや否や我先にと帰宅する部員達へ「成功させようね!」と声援を掛ければ 嬉しそうに手を振り返す。そうしてあっという間に放送室は私とロマーリオさんだけになり 私達もノロノロと帰宅準備を始めた。
「ま、明日にはボスに会えるさ」
「会わなくても別に良いですし。って言うか、なんだかロマーリオさんって ディーノさんのお父さんみたいですよね」
「ほう、そうか?まぁボスが坊ちゃんって呼ばれてた頃から知ってるからな。俺は最初ボスの父上の部下だったんだ」
「ぼ、坊ちゃん…?!」
なんじゃそら。でも言われてみれば ディーノさんはお坊ちゃんな雰囲気が漂っている。あの、人が良さそうなところや 少しドジなところ――少なくとも私のお坊ちゃまイメージはそんな感じだった。でも少し甘やかし過ぎたのではなかろうか。なんたってあのヘナチョコっぷりは 他に類を見ない程素晴らしく ついつい拍手を送りたくなる。
――私がマフィアなら絶対自分のボスにはしたくない。
顔良し、家良し、性格良しと三拍子揃っているも 天は二物を与えず。ディーノさんには失礼だが 彼を見ているとやはりそう思ってしまう。そうして私は部屋に鍵を掛けると ロマーリオさんに先に玄関へ行って貰って、職員室へ向かった。彼は私の護衛だが 流石にこんな学校には来まい。なにせこの学校には最強の不良 雲雀君がおり 学校を破損しようものなら彼に咬み殺されることは目に見えて明らかだからだ。
ふと そういえば彼もマフィアだったか、と思い出した私。彼とは委員会の集まりで何度も顔を合わせたことがある。何か行事となれば放送局はアナウンスなどの仕事で駆り出され そうこうするうちに多少なら言葉を交わすことすら出来るようになっていた。勿論若干恐怖はあるが 話せない程ではない。
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