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「ちょっとベルちゃん、"そいつら"だなんて呼び方可哀相じゃない。あの子達にはちゃーんと『コマンダー』って名前があるんだから」

「それだってハンドルネームじゃん」

「ム…というか、それは違う人間だしね」


あらそうだったかしら?と身体をくねらせ、ここぞとばかりにジョーカを含めた四枚を出すルッスーリア。「革命!」と叫べば カードの優劣が真逆になり、次のターンで彼は含み笑いをしながらエースを出した。普段の優劣ではエースの強さはジョーカを除いて上から2番目、したがって今は下から2番目だ。するとベルはラッキー!と叫びながら現在一番強い数字の3を出して上がりを告げた。


「あぁーん!何でベルちゃん3持ってるのよー!」

「しし!もう負けたと思ってたけど、革命してくれたから助かったぜ!」

「ジョーカも使いどころを間違えばただのカードってことだね」


背後では未だ続くスクアーロとレヴィの喧嘩。ベルはカード遊びに飽き 卓上のトランプをぐちゃぐちゃに混ぜると座席を立った。彼の行動で今日はお開きになり ルッスーリアも渋々カードを放る。そんな中マーモンだけはジッと机の上で大人しくしていた。

彼は考えていたのだ。跳ね馬がリストに載っている要人達を捕まえ損ねた時に起こり得る惨事を。何故ならあのリストに載っている人間達は マーモン達同様ボンゴレの転覆を狙う反逆者なのだから。跳ね馬が勝てば ボンゴレに情報を分け与えたヴァリアー達の株が上がる。反対に反逆者が勝てば その勢いに乗じて彼らも反逆すれば良いこと。先程マーモンが"どちらに転んでも自分達の利益になる"と言ったのはこれらの理由からだったのだ。

そして事の成り行きがいかなる方向に行こうとも リスト作成者――またの名を『コマンダー』が勝利することには変わりはない。全てがやつの思惑通りに進むことに些か苛立ちを覚え ポーンと飛べばベルの肩に着地した。


「全部『コマンダー』の思惑通りなんてつまらないね」

「それ王子も同感ー」


ベルは苛立ちを隠し切れていないマーモンの台詞にクスッと笑みを漏らした。幹部一策士マーモンのプライドが何かを訴えているのだろう、絡まり合うDNAのように複雑な戦況にベルは楽しくて仕方が無かった。不意に食堂の扉が開き 見張りの一人が中に入ってくる。


「マーモン、跳ね馬がお前に面会を要求している」


フードを目深に被り無表情な顔を更に覆い隠していたが ベルはその顔に一瞬浮かんだ笑みを見逃さなかった。ベルの肩から見張りの肩に飛び移る黒い赤ん坊。大男に連れられながら彼はひっそりと呟いたのだった。


「目には目を、策士には策士を、ってね」



******


マーモン達がカードゲームをしていた頃、深桜はこれといった事件に巻き込まれることもなく キャバッローネの部下達に見守られながら平穏な日々を送っていた。時雨がしとしとと降る11月下旬、彼女の後ろには 影のように側に控えているロマーリオ。深桜は相も変わらず暗号を解きつつ溜め息を吐いた。




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あきゅろす。
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