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可愛い可愛い!そう言ってディーノの肩に乗るエンツィオを撫でる深桜。あまり彼女が近寄るものだから ディーノは思わず後ずさり 深桜が見やすいようにエンツィオをカウンターに置いた。先程まで急降下していた彼女の機嫌が相棒の登場で一気に上昇し ディーノはプッと吹き出す。


「ははは、深桜って動物好きなのか?」

「はい、でもこの子特に可愛いですねー」


エンツィオを持ち上げ ちゅ、と口許にキスをする深桜。それを間近で見ていたディーノは 自分がキスされた訳でもないのに顔が赤くなるのを感じた。彼の部下がニヤニヤとディーノを見る。


「ボス、顔が赤いぜ?変なこと想像してたんだろー」

「う、うっせー!してねーよバカ!」

「「あ」」


深桜がエンツィオをカウンターに置いた刹那 ディーノの腕が湯飲みに当たって倒れた。その湯飲みには飲み残したお茶が半分程入っており 倒れた拍子につーとエンツィオの元まで広がっていく。

エンツィオがスポンジスッポンと言うことを知らぬ深桜は お茶がエンツィオに掛かるのをただ見ていた。お茶自体は温くなっていたし 大して害はなかろうと。だがエンツィオに害はなくとも 水を吸ったエンツィオは深桜には害であった。


「……なんか…エンツィオ、ちょびっと大きくなってない?」

「深桜、今のエンツィオは危ないから離れろ!」

「危ない?でもさっき大人しかったじゃないです…………か」


バリンバリン。
深桜は目の前で繰り広げられている光景に硬直する。3周り程大きくなったエンツィオが湯飲みを食べていたのだ。エンツィオお腹壊すよ!と湯飲みからエンツィオを離そうと彼を持ち上げるも 酷く暴れるため図らずも床へ落としてしまう。


「ああ!エンツィオごめん!」

「エンツィオは大丈夫だから離れろ…って、危ない!」

「へ?」


彼女の足へ噛み付こうとしていたエンツィオを見て ディーノは咄嗟に深桜を抱き寄せる。彼女は「うぐ!」と全く色気のない声を出してディーノの腕の中にすっぽりと収まった。彼の胸板に鼻をぶつけたようで 痛みにフルフルと震えている深桜。


「だから、危ないって言っただろ」

「す、すみません…?」


深桜は未だに"エンツィオが危ない"の意味を理解していない。だがそれよりも"ディーノの腕の中にいる"ことのほうが彼女の脳内を占め 頬を薔薇色に染め上げた。急に大人しくなる深桜を不審に思うディーノだったが 彼もまた自分の行動を思い出して赤くなり慌てて彼女を解放する。


「積極的だなーボス!」

「ち、ちげーって!今のは咄嗟に…!」

「ははは!深桜嬢なら大歓迎だぜ!」

「…へ…!?」

「バカやろ!変なこと言うんじゃねーイワン!」


爆笑する部下と真っ赤になるディーノの隣りで ロマーリオがエンツィオを捕獲する。そして何処からか取り出したドライヤーで乾かすと 見る見るうちにエンツィオは元のサイズに戻って大人しくなった。

深桜は初めて見る現象に目を丸くし 伸縮カメだ、と心の中で勝手に命名する。それから まだ部下にからかわれているディーノの方を向くと クスクスと笑い声を立てて微笑んだ。楽しそうに笑う深桜――それを見て ディーノの心臓がトクンと音を立てる。


鳴りやまぬ胸の鼓動。もう少しだけその余韻に浸っていたい。そう思ったのは誰なのだろうか。







(ははは、ボス顔赤すぎだぜ!)

(て、てめーらは笑いすぎだ!)

code.2了.
3に続く。

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※最初にある暗号の解読らへんは刃連の想像です。




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あきゅろす。
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