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そうしてどのくらい泣いていただろうか。涙と一緒に全てを流し 泣きやんだ私の気持ちは随分とすっきりしていた。泣いていた間中私を優しく抱き締め 背中を擦っていてくれていたディーノさん。今更ながら恥ずかしくて顔が赤くなる。
「お、やっと泣きやんだな」
「す、すみませんでした…」
「はは、謝んなって」
「そうだぜ深桜嬢。今回は元はと言えば全部ボスが悪ぃんだ」
「ロマーリオ…やけに今日は食い付くな」
ロマーリオさんはゴシゴシと涙を拭く私に笑い掛ける。きっと私の顔は酷いことになっているに違いなく 見られたくなくて俯くが ディーノさんが下から覗き込んで来る。(普通乙女の泣き顔覗き込むか?)
「深桜、ロマーリオの言う通りこれは俺の責任だ。だから、俺達が全力で守ってやる!」
「………は…?」
「9代目のこともあるが、あちらはまだなんとかなるだろ。だが、お前が殺されちまったら後味わりーし…何よりツナ達に会わせる顔がねーからな」
照れたように くしゃっと笑うディーノさん。その一方で 突然の申し出に戸惑う私。彼が「よしゃ!決まりだ!」なんて皆に告げれば野太い歓声が沸き起こる。勝手に決定されていることに少々不満を覚えていると 一階からお父さんが「お客さん来てんのかー?」と私に問い掛ける声が聞こえた。
大声でそれに返事を返す私――金色に輝くディーノさんがとても頼もしく 彼と一緒なら大丈夫、と考える自分がいた。
*****
あれから 深桜達は一階に移動した。空腹の深桜が少し遅い朝食を食べていると 父親の剛が姿を現し ディーノに声を掛ける。
「こりゃディーノさんじゃないかい!先日は武がどうも!」
「あ、いや、こちらこそ!深桜にはコンピュータ修理してもらっちまったし、俺達こそどうも!」
ズズズ。
近所のおばちゃん方がするような挨拶をしている二人を余所目に 深桜とロマーリオはお茶を啜る。一応ディーノやロマーリオはお客という立場にあるので 深桜が用意したのだ。
彼女はぼんやりと覇気のない手付きで食器を片付けた。するとロマーリオを始めとする部下の方々が元気付けるように深桜の頭を撫でていくではないか。深桜は皆の気配りが嬉しく思ったがなんだかまるでお触り地蔵になったような心地がする。
「深桜嬢には悪いことしたな」
「いえ、私にも非はありましたから」
「ははは、嬢ちゃんは強いな。しかし、あんな難しい暗号解いちまうなんてなー…いっそキャバッローネに入らねーか?」
「じょ、冗談言わないでくださいよ…!」
さり気なく深桜をキャバッローネに勧誘するロマーリオ。だが彼女はあっさりと躱して店の奥に逃げて行ってしまい それと入れ替わりにディーノが戻ってきた。今日の剛はいやに機嫌が良く 彼らに昼飯をご馳走することにしたらしい。
「あれ、深桜は何処いったんだ?」
「キャバッローネに勧誘したら逃げちまったぜ」
「ロマーリオ…勧誘したのかよ…」
行動の速いロマーリオに苦笑いするも あの才能は是非欲しいなどと呟き茶を啜るディーノ。 部下も同感だと頷き 正式に誘うか、という話にまで進んでいく。
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