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 何かが掛け声をかけながら 勢いよく俺の上に落ちてきやがった。ただでさえ弱ってんのに、更なる追い討ちを掛けられて地面にうずくまる。が、すぐに顔を上げて怒り心頭で叫んだ。


「ってぇーな、てめぇ!!果たすぞゴラァ!!」

「うわわ!なんかいた!」


 俺を足蹴にしやがったやつの面を見てやろうと顔を上に向けると、想像していたやつとは全く別の人間がいた。金がかった茶髪の女で、紅い服がよく似合っている。俺と同じ東洋系だろうか。


「女ぁ?」


 拍子抜けして俺は一言呟いた。すると、ソイツから勢いよくチョップが飛んでくる。そして顔をドアップにしてきたと思えば、にっこり笑って


「あんた、今私を女だからって馬鹿にしたわね?」


と、殺気を放ってきた。なんだこの女――正直、怖ぇ。笑顔なのに姉貴とは別の怖さがある。それになんと言っても、コイツが放つ殺気は半端ねぇんだ。だから俺は、コイツはカタギじゃない。そして遥かに俺より強い、と瞬時に直感した。


「…チッ…」


 今の俺じゃ勝てるはずもねぇ。どうせコイツもボロボロな俺を馬鹿にするんだろう――悔し紛れに舌打ちし、フイと顔を逸す。そうして 俺がその場を去ろうと背を向けた時、女は予期せぬ行動にでた。紅い女はいきなり俺の腕を掴むと、


「うわー…血ぃめっちゃ出てるんだけど」


なんて呟いた。
しみじみ見てんじゃねぇよ。俺は無性に腹が立ってヤツを威嚇する。


「てめぇには関係ねー。離しやがれ」

「でも、見てて痛いから治療しない?」

「るっせーな!俺に関わんな!」

「痛い痛いー」

「…だから、阿呆女は引っ込んでろって言ってんのが聞こえねーのか!!」


 この一言が、まずかった。
俺は元々口が悪いほうだが、知らず知らずのうちにソイツの地雷を踏んでしまったらしい。ジャキ、と耳元で金属音がしたと思ったら とびっきりの笑顔で ソイツが拳銃を俺の頭にかざしていて。


「阿呆女って?」


 周りよりもひんやりとしている裏路地が、更に気温が下がる。短気な女め、と 俺は負けじと反論してやる気満々だったのに、意外にも出血が多かったのだろうか。口を開く前に俺は意識を飛ばしてしまっていた。



*****



 なんか踏んだかも、そう思ったら足元から叫び声が聞こえてきた。そっちに目をやれば 銀色のものがうずくまっていて。すっごく怒ってたけど、まぁここで会ったのも何かの縁だと思って少し話してみたら、すっごく失礼なやつだった。


「え、気絶したの?」


 元々怪我をしていたらしく、地面には赤黒い水溜まりが出来ている。なんでこんなんなるまで放っておくかなー、なんて呆れた溜め息を吐きながら そっと怪我に触れた。見たところ傷は浅いけど、血管でも傷付けたのか 血が止まらない。私はハンカチを取り出し、腕を縛って一時凌ぎの応急処置をした。だが、応急処置はしたものの当の本人は 未だ気を失っており、一向に動く様子はない。となれば、彼をこの場から移動させるには 私が運んでやる形になる訳で。


「後でなんか奢らせてやる…!」



 仕方無く私は彼を肩に担ぎ、自分よりも背の高い彼をノロノロと家に向かって運び出した。







(この時はまだ、あの彼だとは気付いてなかったんだ)
第1章12番candidate-4了.
13番に続く。



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