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『保護者の方は――』

「あ…」


 体育館側の校舎からアナウンスが聞こえて来た。入学式終了のお知らせだ。


「(結局出られなかったな…)」


 雲雀と風羽の戦いに巻き込まれないよう遠くへ避難していた花凛は 楽しみにしていた入学式に出られなかったことに落胆し深い溜め息を吐いた。


――ま、事前に道を調べて無かった自分も悪いんだけどね…


 今更急いでも仕方無い、と一人開き直る彼女。戦いが終わるまで待つべく桜の木に背をもたれた。花凛と桜の木の間を風がサアァと駆け抜けていき沢山の花弁がはらりと舞い落ちる。花びらが視界を遮りさながら風が強い日の雪山であった。


――桜吹雪とは上手いこと言うよね。


 穏やかな表情で木を見上げれば青い空が枝の隙間から見える。暇になった花凛は地面に落ちた花弁を一枚、また一枚と拾い始める花凛。そうして両手いっぱいになったところで勢いよく息を吹き掛ける。


――ふぅっ!


 すると規模は実際の100分の1程ではあろうが桜吹雪のような現象が起こった。ふわっと楽しそうに舞う春雪を眺め自分で似非桜吹雪を作れたことに喜びを覚える。彼女はこれが意外に楽しい事に気がつき何度も繰り返しては遊んでいた。


 クスクスと笑いながら しばらくの間桜の花びらと戯れる。と、ふと 誰かに見られている気配がした。怪訝に思い顔をあげる。すると遠くの廊下の窓から 何者かがこちらを見ているでは無いか。


「誰…?」


 花凛はさほど視力が良い訳では無い為 人の顔を識別することは出来なかったが、背の高い男の子であることは分かる。スパイやその類では無いか、と一瞬考えなかった訳ではないが別段悪い人のような気がしなかったので、何もせず彼を眺める。

 しかし、彼は花凛を見たまま動かない――少なくとも花凛には動いたようには見えなかった。そんな彼に対し花凛が不思議そうに首を傾げると、彼がニカッと顔を綻ばせたように見えた。


 だが、 よくよく考えるとそれも気のせいではなかったのだろうか。何故なら 首を傾げた刹那突風が吹き抜け、淡いピンク色の花弁が花凛の視界を遮ったのだ。その為ハッキリと見えなかった。

 徐々に風が収まり花凛が再び廊下に目をやると、既に彼の姿は無かった。




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