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「これ、なんなんですか?ただのチェーンみたいですけど…」

「ああ、それは君への贈り物だよ。世界には、それと 後もう一つしか存在しない非常に貴重な鎖だ。肌身離さず付けていなさい」

「…贈り物…ですか?」


 なんでこんなものが、と今にも言い出しそうな顔つきで彼女は問いを返す。9代目はそんな彼女へ、更に説明を続けた。


「最近とある人から 譲り受けてね。君は持っていたほうが良い、そう私の超直感が告げているんだ。持っていてくれないかね?」


それは決して命令ではなく、ただのお願い。けれど風羽が彼のお願いを断るはずもなく、


「まぁ…持ってるだけなら構いませんが」


と、ブレスレット代わりに腕へ巻いた。装飾などは何もないが、銀色の鎖が彼女をより一層スタイリッシュに見せている。


「…そうだ、贈り物と言えば、花凛にもあるんだ。あの子にも渡してやって欲しい」


 風羽がチェーンを手首に巻き終わったのを確認すると、彼は内側の胸ポケットから布の塊を取り出す。花凛へ渡すという代物は、大事そうに何重にも布にくるまれていて、それが姿を見せるまで少々時間が掛かった。


「綺麗な小瓶ですね」


 彼が布を全て取り去ると、小指の第一関節程しかない小さな小瓶に白い鎖がついたものが出てきた。中には何かがゆらゆら揺れている。何が入っているのだろう、と風羽が覗き込むと


「それは、死ぬ気の炎にとても酷似したものなんだ」


と、彼が説明を付け足した。


「死ぬ気の炎?死ぬ気の炎って小瓶とかに詰められましたっけ?」


 初めて目にする白い死ぬ気の炎や それを入れている小瓶に、興味津津と言った様子でそっと手を触れる風羽。すると彼は、彼女を優しく見守りながらこう言う。


「普通なら無理なんだが、その小瓶は少し変わっていてね。…どうやら私が幼い頃に、作られていたものらしいね」

「へぇ〜…なんだか凄いものみたいですね!でも、そんなもの頂いても良いんですか?」

「もちろんだよ。ただ…炎で怪我をすると思うかもしれないが、その小瓶は開けようとしても開かないから安心しなさい」

「え…開かないとは…?」


 妹に持たせるには少々安全性に欠けていると思っていた風羽は、見事に言い当てられて 少し罰が悪そうな顔をする。それに対し、9代目は楽しそうに


「絶対とは言えないが…未だ誰も開けれたことはないからね。安全だと思うよ」


なんて、彼はにっこり笑った。風羽はしばらく渋っていたが、彼の顔を一瞥して 花凛に渡すべく大事そうに懐にしまう。


「分かりました…あの子に、しっかり渡しておきますね」

「ありがとう。ついでにあの子にも『肌身離さず』と伝えておくれ」


 始めから風羽が了承することなど分かっていたように彼は微笑んだ。そうして贈り物の儀式が終わると、しばらく沈黙が流れる。だが9代目がその沈黙を破った。


「すぐ日本へ戻るのかね?」


 風羽は彼が発した言葉に微かに目を見開いた。なんだか、まるで9代目が『まだここにいて欲しい』と言っているようで。だから、つい彼女はこう口走ってしまっていた。



「いいえ…ツナの家庭教師と一緒に日本へ帰ることにします。だから、それまではイタリアにいますよ」








(ごめん、まだしばらく帰れないや)
第1章11番candidate-3了.
12番に続く。


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