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「…えと…はい?」
あれ?私耳おかしくなったのかな?それとも頭?うーん、それは有り得るかも。彼の言葉が理解出来ず、私は自分の正常を確かめようと自分の頭をコンコンと軽く叩いた。
「…うん、中身は大丈夫っぽい」
「一体何がしたいの…」
彼の呆れたような冷たい視線がグサッと突き刺さる。訳分からない発言をしたのはそっちなんだから、そんな冷たい目で見なくても――なんて、理不尽な仕打ちに私は一矢報いてやりたくて、いつもなら彼には絶対にしない反論をしてみる。
「雲雀さんよりは、頭大丈夫ですよ?」
「ワォ、咬み殺されたい?」
ちょっと調子に乗り過ぎたかもしれない。トンファーがチラッと見えた気がした。折角危機を免れたのに、わざわざ咬み殺されるなんて御免だったから慌てて謝罪する私。たまに勇気出して大胆な行動するとろくなことがない、と心に刻み付ける。そして、私は改めて彼に質問してみることにした。
「あの…それは何なんですか?」
すると、デスクの上を指差す私を見て彼は至極楽しそうに話し始めた。
「あぁ、これね。過去5年間に渡る各学年毎の成績、来年の予算、更には並盛に関する会計関連の書類だよ」
「…そんなの出してどうするんですか…?」
「どうもこうも、これ全部統計取ってまとめるんだよ。君が」
――ああ、やっぱり私耳がおかしくなったのかな。
彼が最後の単語を妙に強調していたのは、私の気のせいだと思いたい。そうじゃなかったら何故。
「どうも風紀って喧嘩出来ても頭使う仕事出来ない輩が多くてね…最近困ってたんだ」
まるで私の心情を読んだかのように雲雀さんは理由を語り出す。
「だからって…何で私なんですか?」
先程彼に反論して咬み殺されそうになったけれど、ここは引いちゃいけないと思った。だって、そうじゃなきゃきっとやらされるに違いないから。けれど、
「君、頭良いみたいだから丁度良いと思ってね」
なんて、彼は妖しい笑みを浮かべる。お願いもとい命令を取り下げる気など皆無だ。そんなもの自分でやれば良いじゃないか、などとは流石に言えるはずもなく。
「……遠慮させ」
「言っとくけど、君に拒否権はないよ」
私が恐る恐る否定の言葉を口にしかけた時 彼が素早い動きで腕を振った。と、思ったら私の顔の真横にはトンファーが突き刺さっていて。
「(壁に突き刺さってるぅぅぅ!!)」
暴力反対!職権乱用反対!心の中で必死に訴えるも、こんな状況ではとてもじゃないが口にだして言えない。ふと、風羽だったら言えるんだろうにな…なんて考えが浮かんだけど、いつまでも姉に頼る訳にはいかないから 慌てて頭から追い払う。
私は困り気味な様子で彼を見上げた。背はさほど高い方ではないけれど、私から見れば十分背は高い彼。ジッと私を見て肯定の返事を待っているようだ。彼の目は鋭くて非常に威圧感があるけど 澄んでて綺麗だな、と この場に似つかわしくないことを考える。
「で、返事は?」
「…い、嫌です…」
ガスッ。一度壁から引き抜かれたトンファーが、再び壁に突き刺さった。もうこれ、いじめだ。
「正式な風紀委員とまではいかないけど、君がこの仕事を引き受けるなら風紀委員補佐として授業免除にしてあげるけど?」
授業免除。この言葉は私の心を大きく揺らした。何故なら、授業免除なら放課後にこっそり勉強しなくても普段の時間に勉強出来る。(まぁやっぱりクラスから離れるのは寂しいが)
「授業…免除…」
「そう。その代わり学校や並盛の会計その他、頭を使う仕事は全てやってもらうことになるけどね」
仕事増えてますが。しかし条件としては全然悪くない。会計とかくらいなら私でも全然やれると思う。ただ、能力以外で一つだけ問題が残っている。
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