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「あああ!もー私の話聞いてってばー!」


 頭を抱え訴えてみるも、彼らはある種の二人の世界へ入ってしまったため聞こえる筈も無い。こうなってしまえば恐らく誰にも止められはしまい。諦めにも似た溜め息をそっと吐き花凛は彼等から距離を取ったのだった。



*****



 永遠に戦いが続くかと思われ 花凛が些か飽き始めた頃、入学式の終わりを告げるアナウンスが校舎から聞こえた。生徒会長である風羽の挨拶は不在のため飛ばされたようである。風羽は緩い先生方に感謝した。が、実際のところは 仕方なしに飛ばしたと表現した方が的確かもしれない。


「…やめた」


 それまで至極楽しそうに闘っていた雲雀が、アナウンスが流れたと同時にトンファーを降ろす。


「あっそ。だったらサッサとあっち行きなさいよね」


 雲雀の言葉を受け、風羽は手を降ってシッシッと追払う仕草をしてみせた。けれども雲雀はあらぬ方向を見ており風羽の話など聞いていない様子。自己中の権化とでも呼ぼうか、実に気分屋な人間だ。


「……」

「どうしたの?…お腹でも空いた?」


 お前だけだろうと突っ込みたくなる台詞を放ちなんとは無しに雲雀の視線を追う。そうして辿って行けば 彼の瞳には花と戯れる花凛が映っていた。


「おーい、雲雀君よ。私の話聞いてる?」

「……」


――私は無視か。


 あまり熱心に花凛を見つめているものだから、風羽の心にはむくむくと悪戯心が沸き起こった。片手で銃を弄びつつにやりと妖艶に微笑んだ。


「はっはぁーん…さては雲雀、花凛に惚れたわね?」


 風羽はからかうように雲雀へ問い掛ける。勿論否定されるだろう、と予期して言ったのだ。そして予想通り 雲雀に鼻で笑われ否定されるのだが。


「そんな訳ないでしょ。君馬鹿?」

「馬鹿とは失礼ね…って言うかね、万が一本当に惚れててもお前なんかに花凛はやらないわよーだ」


 馬鹿呼ばわりされたのが癪に触ったのだろうか、風羽は腕組みをして不機嫌そうに返事をした。そうして彼女が動かぬ雲雀を観察していれば


「ねぇ君、随分あの変な子気にしてるけど、どういう関係?」


と、目に花凛を映したまま 今まで疑問に思っていたことを口にした。脈絡のない質問に面食らうも 風羽は律儀に答えてやる。


「姉妹よ。血は繋がって無いけど」

「ふぅん?そう…」

「何よ?」


 文句でもあるのか。そう言いたそうに睨み付ける。だがやはり雲雀が気にする様子はない。その後もしばらく花凛を眺め 何かを思案しているようだったが、突然クルリと踵を返すと背を向けて歩き始め――幾らも歩みを進めないうちにピタリと立ち止まった。そうして まるで警告するように風羽へ一言言い放ったのだった。



「あの子、目離さないほうが良いかもね」







(あーあ…早く戦い終わらないかなぁ。)
5.first contact-5了
6.に続く


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