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「山本君、何か隠して無い…?」


 いつもと様子の違う彼が気になり、私は誤魔化されまいと食い下がる。


「あはは、まー細かいことは気にすんなって!な!」


 絶対何か隠してる。けれど、誰にだって言いたくないことの一つや二つはあるだろう。現に自分も仲の良い京子や花にだって言えない秘密が沢山ある。だからここらで私も引き下がることにした。


「山本君がそう言うなら深くは突っ込まないよ……でも…でも!山本君も何か悩みがあったら一人で抱え込まないで相談してね?話だけなら私だって聞けるし」


 彼に自分の想いを語りながら、走馬灯のように屋上ダイブのシーンが私の頭の中を駆け抜ける。すると山本君はそんな私をぽかんと意表を付かれたような表情で見、それからすぐに


「ん、分かった。サンキューな!」


と、日だまりのような笑顔を惜しみ無く私に振り撒いたのだった。



****



「…であるからして、辺ABの二乗と辺BCの二乗は辺ACの…」


 今は体育後の数学の授業。先生の声が何処か遠くから聞こえるようで、珍しく授業中起きている俺はぼんやりと教室の左側へ目を向けた。そこには俺同様ぼーっと授業を聞いている(聞いてるって言えないか?)ツナがいて。


『沢田君ってどう思う?』


 先程秋桜に問い掛けられた問いを頭の中で反芻し、改めて考え始める。


――どうって…なあ…


 みたところ別に普通のやつ。何か特別才能ある訳でもなくて、いつもオドオドしていて。なのに、何故秋桜はあんなにもツナを気に掛けるのか。

 確かに二人はまだ友達と言う間柄にはなっていない様だし、秋桜は秋桜で『友達作りを頑張る!』と言っていたのだから、そう言う面で気に掛けるなら分かる。だが、俺はなんだか腑に落ちなかった。あいつにはもっと別の理由がある様な――言うなれば野生の感みたいなやつだ。

 そもそも、秋桜は入学式から少し不思議なやつだった。俺が初めて秋桜を見掛けたのは入学式の日。入学式が終わって休憩時間に廊下を歩いていたら窓からあいつが桜の花びらで至極嬉しそうに遊んでいるのが見えて、あいつ楽しそうだなー、なんて思ったことはまだ記憶に新しい。


「…もと、……山本!!」

「うおあ!?」


 ぼーっと過去の思い出に浸っていると突然先生に頭をひっぱたかれる。


「お前、たまーに起きてると思ったら全く話聞いてないし…困ったやつだ。」


わざとらしく先生が溜め息を吐いたので、


「へへっ…すんません!よく分かんなかったもんで!」


と正直に理由を述べると、クラス中で笑いが沸き起こった。先生も笑って許してくれてホッと安堵の溜め息を心の中で吐きつつ自分も一緒に笑う。ふと隣りの席の秋桜を見れば、秋桜もやっぱり笑顔で。


 頭は良いけど、とびっきりの美人って訳でも無いし運動だってずば抜けて出来る訳じゃない「平凡」の形容のような秋桜。でも、その笑顔をずっと見ていたいなんて思ってしまったのはきっと気のせいなんかじゃないんだろうな――







(ね、心の中がぽかぽかしてるよ)

1章4番new school life!-4了
5番に続く。


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