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『いつでも相談乗ってやっからさ!』
にっこり微笑んで、天然野球少年はそう言った。それは、自分が一人じゃないと実感させてくれるとても暖かい言葉。多分本人はいつもの癖で何にも考えずに言ったんだろうけど、彼の言葉は私の心を不思議なほど軽くしてくれた。早速お言葉に甘えて相談してみようかな、なんてことを考えながら 私は山本君の数歩後ろを付いていく。
「(皆が山本君に寄っていく理由、なんとなく解ったかも)」
そう一人ごちて こっそりと微笑む私は、傍から見たらちょっと怪しい子かもしれない。
「…あのね、山本君」
「うん?早速悩みかー?」
「違う違う。悩みじゃないんだけどちょっと訊きたいことがあって…」
「あはは、遠慮無く訊いてみ?」
「山本君は、沢田君どう思う?」
「……ツナを?」
予想外――しばらくの空白の後、言外にそんな言葉を含ませながら山本君は私の問いに首を傾げた。
「うん、沢田綱吉君。なんかこう…潜在的なオーラや才能を感じるとか…無意識に惹かれるとか…なんか、無い?」
「潜在的なオーラや才能?どうだろうなー。俺そう言うの鈍いし…よく分かんねーや」
まぁ、そりゃそうか。ツナ君には申し訳ないけど、今のツナ君のダメダメっぷりはクラス、否 学校でも群を抜いていると思う。それはもうフォローしきれないくらいに。(平凡な私が言うのもなんだが)山本君は 悪ぃ、と手を合わせて申し訳なさそうに私に謝った。
「あ、ううん…!!今の質問気にしないで…変なこと訊いてごめんね!」
「いや、構わねぇって。俺も答えらんなかったし、おあいこだろ?」
私が慌てて両手を顔前で振って謝れば、そんな私を安心させるように頭にポンッと手を乗せてきた。これは彼の癖なのだろうか。
山本君の暖かくて大きな手が不思議と心を鎮め安らげてくれる。折角体育の後にセットした頭をワシャワシャと掻き回されながら 彼は本当に雨の守護者に相応しいなんて、きっと私や姉しか知らない未来(さき)を思い描いていた。
「でもさー…そう言えば、秋桜はいつもツナを見てるよなー」
「…え?」
彼は私の頭を掻き回すの止めると空いてしまった手を持て余すように 今度はポンポンとリズムよく(優しく)叩き始める。私の少ない脳細胞がちまちまと減っている予感がするけど、まぁ山本君だから許そうか。
「そう。入学式で教室に入ってきた時も見てたよなー」
「入学式…」
あの時か。確かに座席に着く直前、ツナ君が気になって顔を上げたら彼と目があったことは確かだ。視線が絡まったことに一瞬驚いた。でも私は漫画で彼を知っていたから初対面の感じがしなくて つい手を振って挨拶してしまったんだった。けれど誰にも分からない様に振ったつもりだったのに。
「まぁ…確かに。でも、どうして…?」
「んー?…まぁ…なんとなく気になってさ!」
あはは、と笑って言葉を濁す山本君は、何処か罰が悪そうな顔をしていて。
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