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「雲雀…花凛に何してんの!」
突然の風羽の登場に惚けていた花凛は、凛と響き渡る彼女の声で現実に引き戻された。姉は相当怒っており纏う空気は針のように突き刺さってくる。
「見れば分かるでしょ。今この子を咬み殺すところなんだから、邪魔しないでくれる?」
風羽の質問、否 詰問を受けて面倒臭そうに返事を返す。だが投げやりな態度が気に食わなかったのだろうか。風羽は一層殺気を膨らませ 怒声をあげた。
「そんなことさせるか!今すぐ花凛から離れなさいよ!」
「やだね」
「おまッ…あんまり駄々捏ねると銃打っ放すわよ?」
「好きにすれば?どうせ当たらないし」
「なんですってー!?」
売り言葉に買い言葉。どんどん嫌悪な雰囲気になってくる。花凛はまるで離婚寸前の夫婦だと心の中でクスリと笑みを漏らした。最も そんなことこの二人には 口が裂けても言えないのだが。
花凛と姉達とは幾分距離が離れている。とは言ったものの、彼らの放つ殺気に板挟みになっている彼女にとって現在の状況は 非常に居心地が悪くて堪らなかった。
「あ、あの…風羽ー…」
遠慮がちに相方へ声を掛ける。が、口喧嘩が段々ヒートアップしている二人には 花凛の声が届くはずもない。仕方無く尻餅をついた状態のまま眺めていれば、漫才の掛け合いが如くリズム良く口論は続いていく。
「大体君、校内に危険物は持ち込み禁止だよ」
「そういうお前も持ってるじゃない。っていうかお前の存在が危険物だ!」
「ワォ、何処でも銃を打っ放す君に言われたらお終いだね」
「私はお前よりまともなつもりだけど?」
「寝言は寝て言いなよ」
ギラギラと殺気をみなぎらせ 幼稚園レベルの口論をしている。だがコントの如く至極息が合っているのだから不思議だ。花凛の推論に過ぎないが二人は毎日のように口論をしているのだろう。
「(意外だなぁ…)」
傍観者を決め込み目の前の出来事に感動を覚えつつ観察を続ける。終いには この二人組んだら最強コンビだよ、等とくだらないことを考え出す始末だった。
そんな最中 不意に風羽がこちらに視線を向けた。そうして顔を見るや否や これでもか、と言うほどに目を見開きズカズカと歩み寄って来たのだった。
「花凛、その頬の傷どうしたの!?雲雀にやられたの!?」
「へ…?いや、これは…」
「わかったわ…雲雀ね。よくも花凛を傷物に…!」
「ええ!?や、違う違う!これ風羽の銃弾だか」
「雲雀、覚悟ー!」
「(話聞いてなぃぃ!!)」
説明する間も無く勝手に自己完結(悪役=雲雀)してしまった風羽。もはや聞く耳持たず。完全に暴走している彼女は標準を雲雀に定めて愛銃の引き金を引いた。
校内に再び銃声が鳴り響き、花凛はとんでもないことになったと青ざめる。が、当の雲雀はと言うと 涼しい顔で全弾を弾き返していた。
「良いよ、君がその気なら相手になってあげる…」
妖しい笑みを浮かべ、トンファーを振り回しながら風羽に突っ込んで行くのだ。
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