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「あの、沢田く」

「花凛ちゃーん!早く行こう!」

「え、いや私沢田君に」

「あんたは着替えに時間かかるんだから、早く早く!」


 花凛は花と京子に手を引かれ、強制的にグラウンドから連れ出された。


 入学式迷子騒動から3週間。最初は落ち着かない様子だった新一年生も 中学校の生活スタイルに慣れてくる時期。そしてそれと同時に、人気者とそうでない者との差が徐々に現れ、クラス内ではヒエラルキーが完成していく頃でもある。

 ツナや花凛のいるクラスでは、その現象が実に顕著であった。


「山本!お前今日の体育凄かったな!」

「次も頼むぜー!」

「あはは、おう!任せろって!」

「「きゃー!武素敵ー!!」」


 入学から1週間も経たないうちにファンクラブが出来てしまった 学年一人気者の名は、山本武。


「(凄い人気だ…)」


 綱吉はクラスの男子に押し付けられたモップを片手に、やる気の無い目で山本に群がるクラスメイト達を眺めていた。


「(体育でヘマばっかりするし…どーせ俺はダメツナさ…)」


 今日はグラウンドでサッカーの授業。しかし運動神経など全く持ち合わせていない彼は皆の足手まといになり、最後にはボールすら回って来なかった。綱吉は山本を取り囲んでいる人の輪を見ていると、まるで自分の惨めさを突き付けられているような気がしてなんだか居心地が悪く その光景を視界に入れまいと掃除に熱中する。しかし、花凛は少し離れた場所から心配そうにそんな彼を見つめていた。


「(ツナ君、一人で掃除してる…)」


――そういえば、漫画でもリボーンが来る以前はいつも掃除を押し付けられていたな。


 そんなことを考え、自分も手伝おうと声を掛けようとするが――敢え無く冒頭の会話に戻る。花凛は後ろ髪をひかれていたが、好意で花凛の手を引いてくれている二人を振り切って逃げ出すのは非常に申し訳なく思え、渋々と更衣室に入った。


「なんか私、呪われてるのかな…」


 乱暴に制服へ袖を通しながら、ポツリと言葉を漏らす。




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