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「ツナ君もお疲れ様。さっきの地鳴りツナ君の仕業?」
「あ、うん!騒がしくてごめんね」
「ううん、気にしないで」
ピリピリとした獄寺達とは対照的に にこやかに言葉を交わす。ツナ君はやっぱり凄いね、と微笑む花凛へツナは口ごもってしまった。
「そ、そんなことないよ!それよりも…花凛ちゃん、さっきの話って…」
「あ、さっきの?――別にツナ君が気にすることじゃないから大丈夫だよ」
一見いつもの優しい花凛だが 彼女の瞳には氷河の如き冷たい光が輝く。追求を拒絶する彼女の笑みに ツナは黙るよりほかに道はない。そして彼の心中では「やはり彼女達には秘密がある」と 疑惑が確信へ変わっていった。
「おい秋桜、10代目に失礼なこと言ってんじゃねー」
「し、失礼じゃないもん」
「大体てめぇ軽々しいんだよ」
「それは……友達だから良いの!」
獄寺の不当な言い掛かりに言い返す花凛。ギンッと睨み合いを続ける二人を 風羽は呆れた表情で眺め
「ね、用がないなら私行くわよ?これ出さなきゃなんないし」
と、ひらひらとノートを示す。
これを出さねば今回の事件は解決しない。いくらタイムカプセルから根津のテストが出たと言っても 確固たる証拠が出揃わなければ学校は解任処分に処することは出来ないのだ。ゆえに 早急に校長へ届出る必要があった。
そうして今回の騒動を解決へと導くべく 彼女が校長室のドアノブへ手を掛けた刹那、獄寺が引き止めた。
「待てよ、風羽。俺はてめぇに言わなきゃならねぇことがある」
「…獄寺君?」
コツコツと靴音を鳴らし 獄寺は風羽との距離を縮める。ツナや花凛は不思議そうに眺めるものの 彼の迫力に気圧されただ傍観者に徹するのみ。そんな彼らを余所に 獄寺は自らの思いを紡いでいく。
「俺は…風羽や秋桜が何を隠してるかは知らねぇ。そしてそれを俺達に言う気がないのは別に構わねぇ…てめぇらの勝手だからな。だがな――」
風羽の目の前で立ち止まり ほほ同じ背丈の彼女を 真向からねめつける。そして彼女の鼻の先を指差し 芯の通った声で高らかに宣言した。
「風羽、てめぇが何と言おうとも俺は"仲間"だと思ってるからな!」
てめぇらが勝手にするなら俺だって勝手にしてやる!と強いまなざしで吠える獄寺。静かな廊下に響く声へ ツナや花凛は目を見開いた。無表情だった風羽の表情にも一瞬驚きが走り――そう、獄寺は風羽が今まで望んでやまなかった言葉を紡いだのだった。
だが その言葉は同時に彼女を更に苦悩の海へ沈めていく。何故ならそれは 決して叶わぬ願い。言うは易く行うは難し――何も知らぬものだけが 軽々しく口に出来る言葉だったからだ。
風羽の中で「お前が私達の何を知っている」と、怒りにも似た感情が高まる。だがその一方で、彼の言葉を嬉しいと思う自分もおり 甘い考えへ傾く心を叱咤する。そして動揺を悟られぬよう平静を装えば 風羽はいつものように話を茶化すのだった。
「あはは、獄寺ったら顔赤いよ?」
「う、うるせぇ!」
「言って照れるなら言わなきゃ良いのにー」
「てめ…人が真面目に言ってんのになんだその態度はよ!」
クスクスと笑う彼女の微笑みはどこかぎこちない。それに気付いた花凛は思わず目を伏せた。
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