[携帯モード] [URL送信]
ページ:2



 硝煙の匂いが立ち込める校舎。爆発の跡や幾筋もの黒煙が 9代目の側近として毎日ドンパチしていた頃を思い出させる。風羽が生徒会長室の窓からグラウンドを伺えば 丁度ツナと獄寺がタイムカプセルを掘出したところだった。


「……40年前のタイムカプセル…」


 彼らは根津に昔のテストを見せつけている。よくまぁあんなテストをタイムカプセルに入れるものだ、と苦笑いをこぼす風羽。隠し場所がなかったのだろうかと一人勝手な想像を繰り広げ 退屈そうに彼らを眺めた。

 風羽はもう一度グラウンドに目を落とす。パンツ一丁のツナと獄寺が校舎に消えていき うなだれている根津は先生方に引かれていった。かつての己の記憶が蘇り 打ちひしがれているのだ。そしてこれ以降 彼は学歴再調査、そして解任となり 学歴詐称によって得た「エリート」という名声は衰退の一途を辿ることになる。

 ツナ達が見事自分達で困難を乗り越えたのに 彼女はほくそ笑んだ。哀しみにも似た複雑な想いが入り交じる感覚を覚えるが 頭を振って抹消する。

 そうして彼らを見届けると窓際から離れ 最後の後片付けを行うべく廊下へ出る。獄寺達に慰謝の言葉をかけてやりたいところだったが 彼女は護衛として、生徒会長として先にやるべきことがあったのだ。


「(焦げ臭い…)」


 つーんとした匂いが鼻をついた。校内を漂っている煙を吸わないよう口許を抑え ゆったりとした歩調で目的地へ向かえば 幾らも経たずに辿り着く。が、扉の前には思わぬ人物がいた。


「雲雀…?何してるの?」

「やぁ、君か」


 床には花凛が座り込み 目を点にして風羽を見る。雲雀の方はノートを持っており 楽しそうに妖しい笑みを浮かべた。


「学歴詐称の人間を咬み殺そうと思ってね」

「学歴…詐称?」


 何故彼がそれを知っているのか、と言う考えが風羽の頭へ浮かぶ。だが わざとらしく目を背けている花凛が視界に入り彼女は妹が何をしたのかを理解した。


「へー?じゃあそれ証拠だとか?」


 風羽が軽い口調で問えば 彼は「読めば?」と言わんばかりに 手にしていたノートを風羽へ押し付ける。待ってました!と受け取り中身を見ると


「わぁーお…証拠揃いまくりだ…」


 ありとあらゆる証拠が記されていることに 思わず感嘆の声を漏らしてしまう。びっしりと書き込まれたノートからは花凛の苦労ぶりが伺え チラリと花凛へ視線を送れば 妹は「ごめん!」と小さくジェスチャーをしていた。『干渉しない』掟を破ってしまったことに対し 多少なりとも罪悪感を感じていたのだろう。

 それに対し風羽は複雑そうな――怒っている訳でも悲しんでいる訳でもない表情を浮かべた。本来ならば未来を知る自分達が干渉するのは避けるべきだ。だが今回の干渉は ツナの運命へ変動を起こした訳でなし、責めるほどではない。というよりむしろ 自分も干渉してしまったことがあるので何と言えば良いか分からなかったのだ。



[*前へ][次へ#]

2/7ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!