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「アクセサリー類は校則で禁止されてるよ」
「あ、すみません!…でも…見逃して貰えませんか…?」
「駄目、例外はないよ。没収するから今すぐ外して」
雲雀さんは よこせ、と手を差し出す。だがこれは 私にとって9代目から頂いたとても大切な代物。易々と渡してたまるものか。私は小瓶を両手で包み 彼の目から覆い隠すように握り締めた。
「渡さないなら咬み殺すよ」
「か、咬み殺されたとしてもこれだけは渡せません!」
「良い度胸だね…」
「きゃ…!?」
問答無用とばかりに 雲雀さんは私の首の後ろへ手を回し 金具を無理矢理外そうとする。非力な私が逃げる術を持ち合わせているはずもなく 取り上げられてしまうのは時間の問題だった。私は無意識に大声を張り上げる。
「――駄目ですっ!!」
「ぐ…!?」
私の叫びと同時に 全く予想だにせぬことが起きた。小瓶が開き 真っ白な炎が雲雀さんに向かって勢いよく飛び出す。
彼は腕で顔を庇いよろけた。灼熱の炎が袖を焦がし 私を包み込む。が、それも一瞬のことだった。雲雀さんと私との距離が開くに反比例して炎は萎み 最後には小瓶の側でチロチロとくすぶるのみ。
「はぁ、はぁ…」
「秋桜…?」
部屋に入る前 私を襲った頭痛と目眩を再び感じる。足がガクガクと震え 身体を支えることが出来ない。
氷のような闇へ沈み行く意識の中 誰かの温もりが酷く暖かくて 知らず知らずに強く握り締めていた。瞼の裏に映る残像――オレンジ色の優しい人が 柔らかく微笑んでいた。
****
「秋桜…?」
苦痛に満ちた表情で眠る少女へ 静かに声を掛ける。彼女は僕の腕の中で荒い息をしており 頬が赤い。額に手をやると 酷く熱かった。
「熱が高い…」
よく倒れる子である。彼女と初めて会った時もこんな風に倒れた来た。あの時はすぐに意識を取り戻したが 今回は高熱にうなされ 目を覚ましそうにない。僕は迷わず彼女を抱き上げた。
小柄な秋桜は難なく持ち上げられる。小脇に抱えようかとも考えたが 思っていたより華奢で 少し力を入れれば壊れてしまいそうだったため横抱きにした。何処か ひらひらと舞う桜の花びらを想像させる。
「…う"……」
小声で呻く彼女。苦しいのだろう、彼女の眉に皺が寄る。よくもこんな高熱で学校に来ていたものだ、と驚嘆せざる得なかった。秋桜は何かに耐えるように歯を食いしばり 強く僕の服を握る。
「……だ、れ…?」
「やぁ、目が覚めたの」
「…ひばりさん…今日も美人ですね…」
「……熱で相当頭イカれたみたいだね」
焦点の定まらぬ瞳でぼんやり僕を見上げる。彼女は普段からおかしな反応を返す傾向にあったが 今度ばかりは何処からどう突っ込んで良いか分からない。
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