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 大分歩き 湿気たっぷりの飽和した空気がうっとうしく感じてきた頃、俺の視界にコンビニが入った。10代目へのお土産を買おうと自動ドアをくぐり お菓子を選びながらも続く会話。


「…その、よ…てめぇがシャマルと知り合いってことは、風羽もか…?」

「うん、知り合いだよ。まぁ風羽が一方的に拒絶してるような状態だけど…でも、シャマル先生は私の師匠だしそこらへんは考えてくれてるみたい」

「……いや、ちょっと待て。てめぇ今何か重大なことサラッと言わなかったか?」

「重大なこと?」


 何か言った?と阿呆のように口を開き驚いている秋桜だが むしろその表情はこちらがしたいくらい。シャマルに会いたくないばかりに天の声を聞いてしまったのか、と思わず胸の前で十字架を切って心を落ち着かせた。


「今…『シャマルがお前の師匠』って聞こえたんだけどよ…」

「?うん、そうだよ」

「(聞き間違いじゃなかった…!!)」


 本日一番のびっくりニュースに開いた口が塞がらない俺。師匠って 殺しか?それともナンパか?と問うと「医学だよ」と至極爽やかに返された。あのシャマルに師事するなんて常人の域を超えている。無論俺も一年後シャマルに師事することになるが リング戦なんかに巻き込まれるなど露程も思っていなかったこの時の俺は 平凡な癖に時々普通の人間がなしえないことをする奴だ、と再度秋桜の評価を上げた。驚きを隠せないまま買い物袋を持って じめじめした世界へ再び足を踏み入れる。


「おま…シャマルなんかに師事して大丈夫なのか?」

「うん、シャマル先生優しいし、分かりやすいし大好きだよ。でも…飛び付いて来るから一人で会いに行くのはちょっと…」

「……あ、ああ…想像出来るぜ」


 引きつった笑顔を浮かべる秋桜へ同意を示せば だよね、と二人で苦笑い。思えば こうして彼女と腹を割って話したことはなかったかもしれない。ただの役立たずだといつもガンを飛ばしていたが 案外悪いやつではないな、と少し反省をした(風羽が溺愛するのだから悪いやつなはずはないのだが 慣れないやつにはどうも警戒してしまうのだ)。俺のつっけんどんな言葉からも徐々に棘が取れ 秋桜も何時になく饒舌になる。10代目の家まで後少しと言ったところでおもむろに彼女が口を開いた。


「そういえばさー…獄寺君と風羽って、最近どうなの?」

「ぶっ!!」

「うわ?!お、お茶飛ばさないでよ…!」

「る、るせー!俺が茶飲んでる時に変なこと言うからだろ!!」

「だって気になったんだもん!」

「だからってタイミングってもんがあるだろが、阿呆!」


 ムー!と睨み合う俺達。だが殺気も何も含まれていない秋桜が俺に対抗出来るはずもなく 彼女はすぐに白旗を上げた。俺がニヤッと優越感の漂った笑みを浮かべると悔しそうに頬を膨らませる。いつもは大人しいが負けず嫌いな面もあるらしく少しだけ彼女に好感を持った。

 コンビニ袋に入っているスポーツドリンクがチャプチャプと小さく揺れる。ま、こいつも仲間に入れてやるのも悪くないか――俺は上から目線で品定めを始めた。


 近い将来 俺の相談役兼気の置けない友人となる秋桜。モデラートで始まる第1楽章――彼女達が巻起こす竜巻はノイズの嵐となって俺達を襲うのだった。




(ねぇ雲雀、そんな必死にならなくても分かる時が来るのよ?)
第1章34番Will you cure,won't you?了
35番に続く。

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気分を変えて ヒロインとお相手をまぜまぜ。




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あきゅろす。
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