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「いや、無理ね。言ったそばから忘れるわ」
「うんうん」
「「(そんなに阿呆なのか…!?)」」
「でも…強く印象付けておけば断片的にでも覚えているかもね」
「じゃあその説明てめぇがしろよな」
「確かに会長が一番説得力あるしな!」
「その通りだ。了平には風羽が説明するのが一番だぞ」
「いや、つかリボーンが説明しなさいよ」
いつの間にか輪に入っているリボーンへ恨めしそうに棘を刺す風羽。彼女の言う通りファミリーに勧誘したリボーンが説明をするのが理にかなっているのだが 傍若無人な彼は再びパオパオ老子(自称)の被りものを被り「パオーン」と無視を決め込んでしまった。途端にリボーンが居なくなったと騒ぎ始めるツナと姉妹以外の人間達。風羽は バレバレの変装なのに、と据わった目で周りを見つめ 何かを思い付いた様子で了平に話し掛けた。彼は相変わらず同じ疑問を繰り返している。
「あのね、了平。ファミリーって言うのはボスの下僕のことなの」
「む?下僕だと?」
「そうそう。例えば…あの銀髪みたいな」
彼女がビシッと指を指した直線上には丁度獄寺がおり 甲斐甲斐しくもツナの顔にテーピングをしていた。その姿をしばらく見て 何か納得したように頷く了平。
「……なるほどな。俺は沢田の下僕か!」
「何でそこ納得しちゃってんの!?」
本当にこの人阿呆だ…と呟くツナに 話を聞いていた花凛が口を挟んだ。その顔にはどこか疲れたような表情が浮かんでいたが 自分のことやツッコミに精一杯だったツナは気が付かない。ただ一人風羽だけは彼女の表情に気が付いていたが 大したことではなかろうと思っていたのだった。京子は救急箱を取りに何処かへ行ってしまい 壊れた窓ガラスを回収する音がバックサウンドミュージックとして部室に響いていた。
「でも、了平お兄さん凄く良い人だよ。優しいし、京子思いだし」
「うーん…分かってるんだけど…あの熱血加減がさぁ…」
「ツナの場合は情熱が足りないから丁度良いんじゃない?そのうち嫌でも慣れるわよ」
「うん、私達も慣れたから…なんなら、今度私達の家に京子達をディナー招待するからツナ君も来ない?」
「あ、良いわねーそれ!」
花凛の提案を名案とばかりに風羽が手を打つと ツナは驚いた様に彼女達を見た。何故なら京子と一緒に一つ屋根の下で夕飯を食べるなど 一生に一度もないと思っていたからだ。顔を真っ赤にして慌てふためくツナ。しかし不意に背中に重みを感じたと思えばそれまで静かだった山本が割り込んで来た。
「良いなそれ!な、秋桜、俺も呼んでくんね?」
「山本君も?もちろん良いよ!あ、どうせなら獄寺君も…」
「……な、何で私を見んのよ」
「……ううん、別に?」
ニヤリと笑う花凛に風羽は居心地が悪そうに顔をしかめた。最近彼女の妹は雲雀に感化されて来たのか非常に良い性格になってきた。勿論褒めている訳ではなく 逆に虚しさを感じる風羽。打たれ強くなったと言えば聞こえは良いが 純粋でいつも自分の後ろを付いて来ていた頃の妹を彼女は懐かしく思った。山本と花凛は好きな食べ物について語り合っており ぼんやりとツナが二人を見ている。
「何ツナ、感動の余り放心?」
「そ、そんなんじゃないって!ただ……いや、良いや」
「何よそれ…尻切れトンボされると気になるじゃない」
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