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ますます格好付かなくなった俺は落ち込み 壁に手を付いた。そんな俺に 風羽はクスリと笑みを漏らす。
「獄寺、落ち込むなってー」
「……どうせ俺は金ねーよ…ふん、貧乏マフィアで悪かったな…」
「中学生なんだし、背伸びする必要ないじゃない。私は…気持ちだけで嬉しいわ」
「…え?」
「だーかーらー!獄寺の一生懸命なところは悪くないって言ってんの!…結構新鮮って言うか…ああもう!とにかく落ち込むな!」
「な…!?」
これは褒められたのだろうか。失望させたと思い込んでいた俺は 安堵すると同時に身体中が熱くなるのを感じた。ふと気がつけば 彼女の顔が非常に近くにある。
「お、落ち込んでねーよ!ってかてめぇ近ぇ!!」
「うっそだー。今落ち込んでたじゃん」
「るっせー!んなの過去だ過去…って近付いてくんな!」
「あはは、赤くなっちゃって可愛いー」
完全に遊ばれている、そう気がついた俺は 無性に悔しくなった。金欠に子供扱い。全く男として見られていないのは明らかである。
そんな折 俺の男としてのプライドを満たし なおかつ風羽へ一矢報いるのにピッタリな考えが閃いた。多少恥ずかしいが ここまで来たら自棄だ。
「…ったく…おい風羽、ちょっと腕出せよ」
「何?……って、何その楽しそうな顔!?」
怪しい!と引き気味な風羽の腕を掴み 俺はポケットをまさぐった。買ったばかりのアクセを取り出し チェーンが付いてる方の手首に取り付ける。そうして彼女の手をとれば――騎士が姫君に忠誠を誓うが如く 軽く口付けを落とした。
「ご、獄寺!?何してんのあんた!!」
「る、るっせー!俺だって恥ずかしいんだよ!」
「じゃあ何でしたのよ?!」
「て、てめぇがいつまでも俺をガキ扱いするからだ…!」
今 自分の顔は真っ赤だろう。どうか夕焼けで誤魔化せますように、と頼りない祈りを捧げ 彼女の手を離した。元々自分用として買った品物のためシンプルなデザインだが 悪くない。
これでチャラだとばかりに風羽を見 やるよ、とぶっきらぼうに告げる。するとパッと顔に紅葉を散らす彼女。少しやりすぎてしまったのだろうか。
俺は"要らないら捨てて構わない"と伝えるべく口を開きかけ――が、それは只の杞憂に過ぎなかった。
「ありがとう…大事にする」
「ん、んなもん別に大事にしなくて良いぜ」
「ううん…なんか分かんないけど…贈り物の中で一番嬉しい!」
にっこりと微笑む彼女が眩しすぎて 思わず目を細める。どんどん彼女へ惹かれていく自分。『何があっても彼女は守る』、まるで己が騎士にでもなったような錯覚に陥るのは 先程の行動のせいか。
闇夜に冴える渡る月さえも 雲隠れをする程の風羽。陽炎の美に囚われた俺は はにかみながら彼女へ微笑み返した。
流れ行く旋律――短調の調べは 未だ序章。
(ちょっとだけ、特別なの)
第1章28番lightning and flame-3了.
29番に続く。
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