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澄み渡った青空。輝く太陽は風羽の横顔を照らし 長い睫毛が頬に影を落とす。不機嫌そうに俺を見つめる彼女は とても美人。彼女に見られているだけで胸が高鳴り 俺は誤魔化すようにエスプレッソを口に含んだ。
「イタリアに帰ってた間ずっと考えてたんだけどよ…」
「うん?」
「てめぇは、何でそんなに妹が好きなんだ?」
「………」
それは前々から気になっていたこと。俺は質問をオブラートに包まずそのままストレートに尋ねた。歪曲して遠回しに尋ねるなど 俺の趣味ではない。チラリと視線を上げ 風羽の反応を伺う。
すると彼女はパフェの長いスプーンを咥えながら 窓の外を眺めていた。もしかすると 勇気を振り絞って尋ねた俺の質問を聞いていなかったのかもしれない。
「おい、風羽!聞いてんのかよ」
「多分聞いてるー」
「(多分!?)」
「んー」と唸りながらパフェを頬張る彼女は マイペースの塊。以前彼女に感じた影は見られないが 何か考え込んでいる様子だった。その悩ましげな表情さえも美しく 俺の目を引きつけて離さない。
同じ空気を吸っているだけで鼓動は早くなり 何かを話そうとすると喉がつっかえてしまう。自分は本当に彼女に惚れているのだ、そう認識せざる得なかった。放っておけば知らない自分が「彼女の微笑みが見たい」と主張を始める。
「……妹、好きじゃ変なの?」
「え?」
それまでパクパクとパフェを食していた彼女が 不意に口を開く。質問返し戦法を取られ 俺は不満げに風羽をにらんだ。
「質問してんのはこっちだろーが」
「私の質問に答えてくんなきゃ、獄寺の質問にも答えないわ」
「な"!」
非常に理不尽な返答には返す言葉もない。俺は盛大に舌打ちを打ち 腕を組んだ。こうなれば風羽の質問に答えるしか道はなさそうだ。
「別に変じゃねーけどよ…けど俺には理解出来ねーんだよ」
俺には3つ年上の姉貴がいる。腹違いの義姉弟だが とてもではないが"好き"などと思えない。それは俺が置かれていた特殊な環境が要因でもあるのだが しかしそうでなくとも風羽のように溺愛することは不可能だろう。
段々俺の脳内に姉貴の姿が形作られて行き 咄嗟に考えを追い払った。ここで腹痛を起こすのはなんとしても避けねばならぬ。
「妹が大好きな理由が、ない訳では無いわ」
「理由?」
「花凛ね…妹に似てるの。ずっと昔の、私の妹に」
彼女は俺の方を見ていたが 実際は俺を通り越して遥か遠くを見つめていた。何かを懐かしむような 優しい笑み。だが俺は 風羽の言葉を理解出来なかった。
「『妹』って何言ってやがる。秋桜はてめぇの妹だろ?」
「花凛は『今』の妹。私が言ってるのはずっとずっと『昔』にいた妹よ。花凛にね…ちょっと似てて可愛い子だった」
「……死んだ、のか?」
聞かなければ良かった、と後悔の念が俺を襲う。ただ理由が聞ければそれで良かった。彼女を苦しめるつもりなど毛頭なかったのに――だが俺の予想に反し 風羽は穏やかに話を続ける。
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