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「(隠し事の多い自分に辟易する…)」
もっとも"自分だけの秘密"と言うより "9代目と自分だけの秘密"と表したほうが語弊は少なかろう。もしかしたら愛しの妹より尊敬すべき9代目のほうが 私の心の内は理解しているのかもしれない。
「しっかしお腹空いたなー…京子、ナミモリーヌでケーキかなんか食べる?」
「え…ケーキ?うーん…」
「あんた太ってないから安心しなさい」
「本当…?じゃあ…ナミモリーヌに行こっか!」
「よーしきた!早速ゴーよ!」
あはは、と明るい笑い声を響かせケーキ屋へ向かう京子と私。良くして貰っている日頃の感謝も込めて今日は私のおごりなのだ。
キャッキャッと黄色い声をあげ 暗い気持ちを吹き飛ばせばあれよあれよと言う間に随分と時が流れていた。
「あちゃぁ…ちょっと長居しすぎたか?」
「そうだね。でも風羽ちゃんが楽しそうだったから良かった」
「ん?どゆこと?」
「風羽ちゃん、なんだか最近元気なかったから…前から花凛ちゃんが心配してたんだよ。だから今日はね、皆で風羽ちゃんに楽しんで貰おうって計画してたの」
買い出しついででごめんね、と申し訳なさそうに真実を述べる京子。本日のショッピングは 元々計画されていたものだったことに気が付かなかった私は 面食らってしまう。
そう、妹や京子、花は私を心配してくれていたのだ。私は自分のことで精一杯――周りを気遣う余裕などなかったと言うのに。
つい涙腺が緩みそうになる。いつも温かい気持ちを分けてくれる子達に 私はどれほど救われているのだろう。嬉しくて嬉しくて 緩む頬を隠せなかった。
「京子……ありがと!」
「あはは、どう致しまして!でもお礼は花凛ちゃんにも、ね?花凛ちゃんが発案者だから」
全く、あの子にはいつも驚かされる。見ていないようで実は周りをよく見ている、そう思った。愛しいと言う感情が胃のあたりから湧きあがるのを 抑えられない。
「…っ…あー!もうあんた達最高!」
「きゃ!」
荷物を地面に置き ぎゅううと京子を抱き締める。端からみたら不思議な光景この上ないが 己の本能にしたがって行動している私には関係ない。色素の薄い髪をグリグリ掻き回せば 京子もギュッと抱き付いてきた。
しかし商店街のど真ん中で抱き合っている女組と言うのは やはり怪しいのだろう。不機嫌そうな誰かの声が横から聞こえた。
「何してんだよ、てめぇらは…」
呆れた感が酷く漂う声色。しかも聞いたことのある声である。京子と顔を見合わせた後 一斉にクルリと首を捻った。予想通り 些か引いた様子の獄寺が佇んでいる。
「よ、獄寺!イタリアから帰還ご苦労!」
「お、おぉ……って、何でんな上機嫌なんだ?」
「そりゃーもう女の子が可愛くて堪んないのよ」
「(そういう趣味が!?)」
獄寺と言えば ダイナマイトの仕入れのため数日イタリアへ帰郷していた。もう帰っていたのか、と一人ごちて京子を解放。そろそろ本当に帰らねば花凛の薬がない。
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