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「っしゅん!」

「風羽ちゃん、大丈夫?」

「んー…誰か噂でもしてんのかな?」


 もしくは花凛の風邪が移ったとか、なんて私は鼻を擦りながら京子を安心させるように笑った。真夏の太陽が ジリジリと肌を焼き 乙女にとって日焼け止めが欠かせない季節に突入している。


「あと買うものあるかな?」

「そうねぇ…病人でも食べられそうな食べ物があると良いけど」

「食べ物…そういえばお兄ちゃんが、ネギを首に巻くと良いって言ってたよ」

「了平め…余計なことを…」


 実際に試した人によると大層効果があるらしい。が、ネギはいかんせん臭いのだ。いらぬ知識を京子へ植え付ける了平に対し私は軽く舌打ちをした。


 今日は京子と町へ来ている。突然花凛が倒れ 昨日の夜は奈々さんに看病を手伝って頂いた。だがいつまでもツナや奈々さんへ迷惑をかける訳にもいかず 今日は私が看病。

 そのお陰か 昼間までに花凛の熱は大分下がっていた。意識もハッキリし 笑う余裕さえも出てきたようで一安心。だが それでもまだ身体は怠く 学校に行ける状況ではない。そんな最中 タイミング良く京子と花が手伝いにきてくれた。

 丁度 病人食や氷、薬などを買いに行きたい、と思っていた矢先だったため 私は喜んだ。彼女達の手助けを非常に有り難く思い 事情を説明する私。すると花が留守番を申し出てくれ その恩恵に預かって私と京子は現在買い出しに来ているのだ。


「花凛、大丈夫かな…」

「大丈夫だよ、風羽ちゃん。花がついてるもん」

「確かに…花はしっかりしてるものね」


 不安な気持ちを優しく溶かし パワーに変換する京子の笑顔。やはり女の子は良い、と私は目尻を下げた。

 蝉の声をバックサウンドに 商店街を歩いていく私達。他愛もない話に花を咲かせ 穏やかな風が頬を撫でる。しかし私の胸中には 言い知れぬ不安がずっと渦巻いていた。


『…そう…例えば、誰にも知られたくない秘密とか』


 雲雀の笑みが瞼の奥に焼き付いて離れない。思い返す度に身体に震えが走る。雲雀は一体何を知ったか、何を見たのか――あの時私はどんな顔をしていたのだろうか。

 一切の感情を消すよう努力はしたが 動揺の余り何かヘマを犯していたかもしれない。ゆっくりと恐怖が身体を蝕んでいく。


「風羽ちゃん…顔色悪いよ?やっぱり風邪引いちゃったとか…」

「え?…あ、ううん!何でもないわ、心配ないない!私風邪なんて滅多に引かないしさ!」

「本当に?無理は駄目だよ」

「大丈夫大丈夫!ピンピンしてるって」


 ウインクを送れば 心配そうに私を見ながらも渋々納得してくれた。隠し事は得意だと自負しているが それでも世の中には嘘を見抜く才に優れた人間がいる。彼女も時折その才を発揮し ひやりとする。言って欲しい言葉をくれる点では非常に貴重な才能だが 隠し事となれば別。ボンゴレの血族の次に注意すべきは 京子とリボーンだ、とさえ思った。



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あきゅろす。
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