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「9代目は私達の育ての親のようなものね」

「育ての…親?」

「だって私達孤児だもの。私と花凛は孤児院で育ったのよ」


 傍観者を決め込んで話を聞いていると 彼らはどうやら昔話をしてるらしい。孤児院かぁ、懐かしいな。昔はよく風羽の後ろをチョコチョコついて歩いてたっけ。でも、なんだか9代目の話を嬉しそうに話す姿が どことなく漫画の獄寺君と重なる。あの二人、実は同族だったりして。


「あーだから凄く仲が良いんスねー」

「そうそう。…だから…花凛に近付く悪い虫は徹底的に追い払わなきゃねぇ?」

「へ?」


 このまま穏便に話が進むかと思いきや 風羽がまた黒いオーラ出して山本君を睨んだ。彼は多少タジタジになりつつも それを笑って受け流していた。今日の風羽は妙に山本君へつっかかるけど、何かあったのかな。


「ふふふ…山本武、花凛に手出そうとは良い度胸ねー?」


「え…?なんのことっスか?」

「風羽、なんだか話がずれて……って聞いてないよ…」


 話の方向がますます訳の解らない方向へ進んでいる。しかも何か勘違いも交ざっており 彼女は良からぬことを企んでいるような黒い笑顔を振りまいている。うーん。放っておいても良いんだけど、でもこのままにすると 山本君が風羽に殺られる、と私の直感が警告を発していた。そこで 私はある行動に出ることにした。それは――



「あ!あんなところに9代目が!!」

「「え?」」


 そう、私が取った行動というのは 「あ、UFO!」の9代目バージョンだった。至極古典的な方法だけど風羽の注意を逸らすには十分のようでキョロキョロと辺りを見回している。そうして彼女が余所を向いた瞬間 チャンスとばかりに山本君の手を引けば私は走り出した。


「秋桜…!?」

「良いから、山本君走って!」


 風羽と一緒に9代目を探していた山本君をグイグイと引く(まさか山本君まで引っ掛かるなんて思わなかった)。風羽は私の掛け声でどんどんと距離を離されていることに気付き 抗議の声を上げている。でも 私は心を鬼にして聞こえない振り。だって 山本君が風羽にボコボコにされるのは忍びないもんね。

 私は彼の手を引っ張ったまま一気に走り抜ける。どうやら風羽が追いかけてくる様子はないが それでも用心のために走り続けた。

 しかし平凡な私が 運動エースの山本君に勝てるはずもなく 必然的に彼に追い抜かされる。そして逆に彼に引っ張られる形になってしまった。走っている彼はとっても楽しそうで 本当に運動するの好きなんだなぁなんて頭を過ぎる。

 そうして彼に手を引かれながら走っていると 結局学校まで走りっ放しで 校門に辿り着くと私はゼーゼーと肩で息をしていた。


「あはは、楽しかったなー!」

「…や…山本、君が、楽しかったなら…良かった…!」


 息が苦しくてなかなか思うように話せない私に「秋桜大丈夫かー?」なんて心配そうに頭を撫でてくれる。そうして段々心臓も落ち着きを取り戻し 私が普通に話せるようになった時 後から学校に来た花と京子が驚嘆の声を上げた。



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