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 風羽が玄関で「早く行こー!」なんて急かしてくる。いやいや、風羽のせいで出るのが遅れたと言っても過言ではないんですが。心の中でコッソリ突っ込みながら私も玄関に出た時 突然「おはよー秋桜ー!」って元気な声が外から聞こえてきた。驚いて私が玄関の扉を開くと なんとそこには山本君がいて 「一緒に行こうぜ!」なんてニコニコしている。


「お、おはよう、山本君…!あの…山本君って家の方向違わなかったっけ?」

「いやーバッティングセンターがこっち側にあったから そこに寄ったついでになー」


 なーるほど。わざわざ寄ってくれてありがとう、と返すと 「俺が寄りたかっただけだし気にすんなって!」と 頭をワシャワシャと撫でられた。この行為、最初こそ照れ臭くて抗議をしていたけれど もう私も馴れたもので 今では撫でられるままだ。気持ち良くて目を細めていると 急に彼の手が止まる。


「君は花凛に何してんのかなー?」

「うわ…会長…!?」


 背後から乱入してきた風羽は 黒いオーラが交ざった笑顔を山本君へ向けていた。


「あ、山本君。私の姉の風羽だよ」

「あ、あーそっか!秋桜の姉ちゃん会長だって言ってたもんなー」

「宜しく、山本武。話はいつも花凛から聞いてるわ」

「うっす!こちらこそ宜しくっス!」

「で、取り敢えずその手除けなさい」

「…え…手っスか?」

「(なんか怖いぃぃ!)」


 彼女の黒いオーラにタジタジな山本君。そりゃああんなオーラ出して睨まれたら 誰だって引くよね…けれど家の前でずっと一方的な睨み合いをしてる訳にもいかないので 私はその場を和ませるように間に入る。


「が、学校行こうよ!ね!?遅刻しちゃうしさ!」

「う、うん…まぁそうね…」

「だな!じゃあ行くか!」


 ノリノリで返事をする山本君にバシッと背中を叩かれて 思わずよろめく私。山本君て元気だよね。私と山本君が歩き出すと渋々と言った様子で風羽も後から付いて来る。なんだか拗ねてる?


「そういえばさー前に秋桜が言ってたけど、ツナって凄いのなー」


 今日の時間割や授業について話していると 不意に山本君が口を開いてそんなことを言った。どうやら前の話覚えててくれたみたい。すると風羽が彼の言葉に対して切り返す。


「当然よ、だって9代目と同じ血を引いてるんだもの」


 それ言っちゃったら元も子もないと思います。しかも かなり風羽の主観入ってるよ。でも 山本君は"山本節"なんて言われるだけあって 全然気にしていない様子で二人の会話は続いていく。


「9代目?まーよく分かんねぇけど、凄いってことでいっか!」

「そうよ、ツナのグローブなんて目じゃないんだから!」

「へぇー!ツナのグローブより凄いんスかー!」

「(ええ!?何でこれ会話成立ってんの!?)」


 ここ突っ込むところだよね。私がおかしいんじゃないよね。だって明らかに話が噛合ってないし 山本君に至っては多分理解すらしてないと思う。しかもさっきツナ君の話題だったのにいつの間にか9代目の話題になってるんですが。けれど何故か二人の間で普通に会話が成立していて ここで突っ込んで良いのかどうかも分からなくなる。

 突っ込みたいのに突っ込めない、というジレンマに頭を悩ませている間にもどんどん話の方向がずれていっているようで。もう突っ込むの止めようか、なんて考えが浮かんだのはここだけの秘密。



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あきゅろす。
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