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朝、私は朝食の準備をする。そろそろ風羽を起こさなきゃ、そう思って階段を上り その途中で階段の窓を少し開けた。少し身を乗り出せば爽やかな風が顔の横を通り 家の中を楽しそうに駆け抜ける。
私達の家はボンゴレから支給された一軒家で 二階には3つの部屋。そのうちの二つは私達が使い 残り一つはボンゴレから使者が来た時に 彼らが泊まれるよう客室に割り当てている。本当は もっと立派な家を支給してくれる予定だったらしいけど あんまり大きいとお掃除が大変だから9代目に頼んで今のサイズにしてもらったんだ。(その時お手伝いさんを付けようか、なんて提案されたけれど もちろん断った)
風羽の部屋まで来れば軽くノックして勝手に扉を開けた。そうしてお寝坊な彼女を驚かしてやろう企みとベッドに近付く。が、ベッドには彼女の姿はなく 代わりに皺くちゃの掛け布団があるだけ。
――…うっわぁ…これは多分…
回り込んでベッドの反対側を覗けば 私の予想通り床の上で気持ち良さそうにクークーと寝息を立てている風羽がいた。あんまり寝相が悪いものだから ベッドから落ちちゃったんだろう。
「風羽、起きて」
揺り動かしても全然起きない。こんな風に彼女が熟睡するのは珍しく 私か9代目の前以外じゃ絶対に深く眠らない。喩え深く眠ったとしても 声を掛ければすぐに起きるのに。イタリアから帰ってきたばっかりだし 疲れているのかな。
揺さぶり目覚めさせようと試みること数回。しかし私の努力は全て玉砕してしまった。こうなったら太陽光線攻撃で起こしてやろうと カーテンを開けるべく部屋の中を移動する。と、チャリと足元で何か金属音がした。
「…ん?」
何か落とした?なんてキョロキョロと足元を探ると 銀色のチェーンが床に転がっていた。風羽が9代目から頂いたって言ってたチェーンだ。彼女はここ最近 お風呂の時も寝る時も身に付けていたみたいだけど 寝相が悪すぎて飛されたのだろうか。
「あーあ…可哀相なチェーン君…」
未だ床で爆睡し続ける彼女の腕をとり ぐるぐると巻き付けてみる。…うん、9代目ってセンス良いよね。風羽によく似合ってる。すると腕に違和感を感じたんだろうか 風羽はモゾモゾと身動きし うっすらと目を開いた。
「…おはよー…花凛…」
「おはよう。今日は床の上でよく寝てたね」
「…床?………本当だ…」
あ、まだ寝ぼけてる。ベッドから転げ落ちたことに気付いてなかったみたいで あちゃー、なんて言って身体を起こした。
「…なんかさ…夢見たんだよね」
「夢?どんな?」
「…んー……覚えてないや」
「え…そ、そう?」
「うーん…でも、なんか寝た気がしないなぁ…」
どうやら夢を見たと言う記憶はあるらしいが内容までは思い出せない、と言う 例のアレのようだ。まだ夢から覚め遣らぬふわふわとした口調で話す風羽。そういえば彼女 朝が弱いんだった。
姉も起きたことだし 下で待ってるね、と一声掛けて部屋を出れば すぐに準備万端な格好で彼女は降りてきた。そうして あれよあれよと言う間に家を出る時間になってしまっていて。
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