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「(あ〜…絶対知ってるはずなんだけどなぁ…)」


 下からオッドアイの少年を凝視する風羽。すると彼は彼女の視線に気付き


「クフフ…そんなに僕は素敵ですか?」


と 話し掛けてきた。それと同時に歩みを止める不思議な少年。

 余裕たっぷりに微笑む彼とは対照的に 風羽は彼を長い間見ていたことがバレて頬を赤らめ ふいと顔を逸した。すると辺りの景色が 先ほど迷い込んでしまった森とは変わっており。パチパチと瞬きをして彼女は 何処?と表現する。

 そして無言の問いに対し 少年は頭にクエスチョンマークを沢山浮かべている風羽を ゆっくりと地面へ降ろすと言葉を紡ぎ出した。



「ここは君の夢と現実をつなぐ扉です。もし君がこの世界から出たいのならその白い扉を通れば無事に出られますよ。しかしまぁ…ここを君の夢と言わしめるには多少抵抗があるんですがね…」


 そこまで言って 彼は一旦口を閉ざした。そうして自分を見上げている風羽の手をさり気なく取れば チュッとリップ音を立てて口付けを一つ落とす。大胆というか積極的というか馴れない類の彼の行動に驚き 風羽は慌てて手を引くも しっかりと彼に手を掴まれており逃げられず仕方無く風羽が観念すると 彼は先程もしたようにギュッと抱き締めてきた。そうして


「僕は六道骸と言います。また会いましょう、美しい姫君――」


と、妖しく微笑むと 目尻にも軽く口付けを落とし 霧の中へ溶けるように消えてしまった。

 後に一人取り残された風羽は その場にポカーンと立ち尽くす。今まで確かにそこにいたのに 跡形もなく消え去った不思議な少年に 風羽は開いた口が塞がらなかった。今のは幻か、と思うが抱き締められた感覚や口付けを落とされた時のリップ音は確かに耳に残っており 幻とは思い難く。

彼女は捻った足をズルズルと引きずると


「(あ、あいつ…紳士のように振舞ってたけど 変態だ…!)」


なんて思いながら 告げられた言葉通り 白亜の扉をくぐったのだった。




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あきゅろす。
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