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「獄寺君、風羽に置いて行かれちゃうよ」

「あ?…うわ、やべ…!」


 花凛が慌てて彼女の後を追う獄寺の背中を微笑ましげに見送っていると チラリと彼が花凛を振り向いた。彼女はそれに気付くと 応援するように拳を顔の隣りに掲げ目でエールを送り、それを送られた本人は顔を真っ赤にして走り去って行くのであった。



*****



「あ、右が音楽室で左側にあるのが多目的室よ」


 私は校長室に向かうがてら校内を案内して行く。けれど当の獄寺はやっぱり母音しか返さなくて 殴ってやろうか、なんて考えが私の頭を掠めた。


「あと、この廊下を一番奥まで行ったところに生徒会室があるの。何かあったらそこに行くと良いわ」

「……おう」


 コイツ私の話ちゃんと聞いてんのか。顔は背けてるわ私が苦労して作っている話題を見事にぶったぎるわ…決めた。次に会った時は絶対殴ってやる。

 私がそんな物騒なことを考えながら彼に校舎内を案内していると しばらくして校長室の前まで辿り着いた。扉の前で立ち止まり 私は壁に寄り掛かる。


「私待ってるから 編入手続きしてきなよ」

「ふん、言われなくたってしてくるぜ」


 憎まれ口を一つ叩くと彼はノックもせずに校長室に入っていった。やつめ、憎まれ口はスラスラと口を付いて出るくせに私が作る話題にはまともな言葉を返さないとは一体どういう了見なのか。私のこめかみが若干ピクリと引きつるが、ここは大人しく黙っていることにする。一応私は彼よりお姉さんだものね。

 そうしてしゃがみ込み 彼の帰還を待っていると校長室の扉の隙間から「ひぃぃぃ!」と言う叫び声が洩れて来る。一体あいつどんな編入手続きしてんだか…絶対暴力や脅しで解決してるわよね。彼が校長をダイナマイトや拳で脅している場面を容易に想像することが出来 私は乾いた笑いを漏らした。

 なかなか部屋から出て来ないものだから私が携帯をいじっていると、不意にガチャリと音を立てて扉が開いた。


「…終わったぜ」

「おーお疲れー」


 開かれた扉からチラリと中を覗いてみると 校長が青ざめてグッタリしている気がするけど これは私の錯覚かな。ま、そんなこと知ったこっちゃないし良っか。私はお疲れ様と言う意味を込めて校長ににこっと笑い掛ければ もう歩き始めている獄寺とともに玄関に向かった。




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あきゅろす。
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