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 太陽が頭上からサンサンと照り付けてくる。もう夏も近いねー、なんて他愛ないことを隣りの獄寺に話し掛けてみるが 彼は顔を背け「あー」とか「んー」の単語しか発しない。気を使って話し掛けているのに 母音しか返さない彼の態度にムスッとし 彼女は随分前に話題を作るのを止めてしまった。

 隣りの獄寺、実は公衆の面前で風羽の隣りを歩くのが恥かしく 単に照れていただけだったのだが。


「(…どうも調子狂う)」


 チラリと彼女を一瞥すれば 綺麗な髪が太陽を受けてキラキラと輝いており 彼女の美しさをより一層引き立てている。スッと通った鼻筋、形の整った唇に見る者を惹き付けて離さない深い色の瞳。更にまるでモデルのようなスラリとした肢体に雪と見紛う程の白い肌。どれを取っても完ぺきだ。だが、彼が彼女に惹かれているのはもっと別なところ――彼女の持つ包み込むような優しさや時折見せる陰りだった(もっとも後者は無意識なのだろうが)。

 1ヶ月前 彼女の元を去った後 獄寺は彼女のことを人伝いで色々調べてみた。が、いくら人に聞けども出てくるのは彼女を最強、またはアルコバレーノに匹敵する程の力を持つ、と謡う話のみ。だが彼は 彼女がどんなに最強と謡われようと 風羽の心がとても脆く儚いことを心のどこかで感じ取っていた。


『一人にしないで』


 なんだかそんな声さえ聞こえてきそうで 彼女が片意地を張って生きている姿を 獄寺は自分と重ねていた。


 考え事をしていると歩みというものは自然と遅くなるもので いつの間にか風羽は獄寺の数歩前を歩いていた。慌てて歩みを早める獄寺だが 彼女はピタリと歩みを止めて振り返る。


「さ、付いたよ」

「ここが並中か?」

「そこに書いてあんじゃん。あ、もしや頭だけじゃなくて目もおかしくなった?」

「一言多いんだよてめぇは!!……たくっ…サンキューな」


 一言付け足さずに話せないのか!なんて怒るが、案内して貰ったことにボソリと小さな声で礼を言う。そうしてそのまま彼女と別れて学校に入ろうとしたのだが、何故だか風羽は獄寺のあとを一緒に付いて来る。


「もうお前用事ねーだろ。付いてくんな!」

「何言ってんの。部外者を一人で学校に入れさせる訳にはいかないに決まってんでしょ」

「部外者ぁ?俺はれっきとした並中生だ!」

「なる予定、でしょ。大丈夫よ、私は生徒会長だから私といれば何にも言われないわ。校長室まで付いて行ってあげる」


 そう言って彼の隣りを飄々とした態度で歩く風羽。言っていることは真面目だが 表情はどことなく楽しそうで獄寺の疑心を煽った。


「てめー真面目に何企んでやがる」

「あはは、やっぱり気づいた?ちょっと紹介したい子がいてねぇ…ま、悪いようにはしないからさ」

「はぁ!?変なことしやがったらただじゃおかねぇぞ!」


 あまりに風羽が適当に返事を返すものだから 獄寺はプッツン切れて彼女へ掴み掛かろうとする。だがその刹那――


「風羽…?!……と、誰…?」


 獄寺の背後から いかにもぽやぽやした雰囲気の声が聞こえてきた。その声に風羽は嬉しそうに振り返り ブンブンと手を振る。




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あきゅろす。
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