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「まだ質問に答えて貰ってないんだけど。彼って?」

「…ひ…秘密…です…」

「ふざけてんの?咬み殺すよ?」

「(うわわぁん!なんでいっつもこうなんだー!)」


――今ここで綱吉の名前を出しても良いものだろうか。


 そんな考えがぐるぐると回り続け 雲雀の問いにはなかなか答えられない。彼女は タイミングよく誰か来ないかなーなんて淡い期待を抱き 冗談を言って時間稼ぎをしてみたものの逆効果だったようで更なる窮地に追い込まれてしまった。


「(予定じゃツナ君と雲雀さんはまだ会わないはず。……でも…)」


 自分が今彼の名前を出し、万が一二人が予定より早く接触してしまったら 未来が変わってしまうのでは無いだろうか――そんな考えが花凛の脳内をループする。

 何故彼女がそんなに危惧するかというと…それは花凛と風羽の二人が並盛に来る以前に決めた掟があるからだった。その掟とは 沢田綱吉がこれから辿る運命への干渉について。花凛は 掟を作った時の風羽の言葉を今でもハッキリ覚えていた。


『良い?本じゃ一応全部ハッピーエンド的に一件落着してるわ。けれど、私達が下手に手を加えてしまえば話が変わってハッピーエンドにはならないかもしれない。だから花凛、私達は要らぬ手は出さないのよ』

『うん、分かった…』

『……大丈夫だってば。ツナは立派に自分で全部乗り越えるもの』


 この掟を逆に捉えれば "真に彼らの仲間になることは出来ない"と言うことで。けれど本当に彼らの幸せを願うならば大切なことなのだ、と己の心に何度も刻み付けた。

 ゆえに彼女は 軽い気持ちで彼らに関わることは出来ない。掟の為に彼女が戸惑っていると 睡眠妨害でただでさえ苛々している雲雀が苛立たしそうに口を開いた。


「…答えないなら良いよ。咬み殺すだけだ」


 そう告げると同時に彼の目は妖しく光り トンファーを振りかざしたと思ったら 勢いよく腕を振り下ろした。が、予想だにせず 花凛は自分でも驚くほどの速さで彼の一撃を避けた。言うなれば火事場の馬鹿力といったやつだろうか。


「あっぶなかったー…!」


 一撃を避けた自分に驚きつつも そのまま扉から逃げようと入口に駆け寄る花凛。しかしやはり雲雀相手では一筋縄では行かないのが現実で。後もう少し、と言うところで彼の腕に遮られ 彼女は壁に追い込まれてしまった。そうして雲雀は彼女の顔の横に両腕を付いて閉じ込めれば


「逃がすと思うの?」


なんて言って、息が掛かりそうなほどに顔を近付けてくるではないか。


「(ちょ、近い近い!!めっちゃ近いぃぃ!?)」


 あまりの近さに花凛は紅く頬を染める。それもそのはず、何と言っても雲雀は美形だ。性格こそ難ありだが顔の造形は申し分なく 一部の女子からは非常に人気があるくらいで。そんな彼の顔がこんなに近くにあるなど 恋愛経験など無い花凛には耐えがたいもので 彼女はパニックに陥っていた。


「…で、彼って?」


 カチンコチンに固まる花凛に雲雀は更に顔を近付けてくる。傍からみると まるで彼氏に浮気を追求されている彼女、もしくは想い人へ熱く迫っているような図である。しかし、彼らの名誉の為に言っておくが 本人達には全くその気はない。




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あきゅろす。
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